死体をどうぞ(ドロシー・L・セイヤーズ)
『死体をどうぞ』
ドロシー・L・セイヤーズ 著、浅羽莢子 訳、創元推理文庫 刊
ピーター卿シリーズ第7作。
徒歩旅行を楽しんでいた探偵小説家ハリエット・ヴェインは、波打ち際に立つ大きな岩の上で男の死体を発見する。喉を掻き切られた死体の傍には剃刀が一振り。
人気のない砂浜に残っているのは当人のものとおぼしき足跡だけだった。
自殺としか思えない状況だが、他殺だとすれば一体どのような方法がとられたのか?
やがて死体は満ち潮に運ばれて海へ消え、困難な捜査が始まる事になり…。
今回の舞台はイングランド南西部。
愛する女性が事件に巻き込まれたと知って、はるばるロンドンから駆けつけたピーター卿なのですが、(以下P66より引用)
「いったいどうして」ハリエットは質した。「あなたがここに?」
「車で」ピーター卿は簡潔に答えた。「死体は見つかったかね?」
「死体のこと、誰に聞いたの?」
「遠くから嗅ぎつけたのさ。死体のあるところ、鷲は集うものでね。ベーコンエッグをご一緒してもいいかね?」
「どうぞどうぞ。どこから来たの?」
「ロンドンからだ──つれあいの呼び声を聞いた鳥のように」
「私は別に──」ハリエットは言いかけた。
「あなたのことじゃない。死体のことだよ。とはいえ、つれあいの話が出たついでに訊くが、結婚してくれないか?」
「とんでもない」
と、つれないお答えのハリエット(笑)。
こんな調子でじゃれあいの様なやりとりが続くのかと思えばシリアスな諍い(13章参照)が展開されたりして、ロマンスの進行はかなりもどかしいのですが、事件の真相も混迷気味。死体が行方不明になったり、ピーター卿の推理が何度も行き詰ってしまったり。
そうかと思うと幕切れは以外にあっさりしていて、やはりセイヤーズ女史は喰えない作家だとの印象を新たに致しましたよ(笑)。
人物描写にシニカルな所がある為か、結末はちょっと苦めかも…。
(2003/03/19)



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