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2004.11.02

夢見る人の物語(ロード・ダンセイニ)

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『夢見る人の物語』
ロード・ダンセイニ 著、中野善夫 中村融 安野玲 吉村満美子 訳、河出文庫 刊

ダンセイニ短篇集第2弾。
今回は幻想譚が多いのでハイ・ファンタジーがお好きな方向きかと思います。
「ウェレランの剣」、「バブルクンドの崩壊」、「妖精族のむすめ」、「海を臨むポルターニーズ」、「カルカソンヌ」などなど異世界の美しさを充分に語ってくれる物語に耽溺しました。訳文も絶品です。

今回の収録作品中で、個人的に一番思い入れのある作品は「バブルクンドの崩壊」で、偏愛しているのが「海を臨むポルターニーズ」なのですけれど、一番好きな作品をひとつ挙げろと云われたら「ウェレランの剣」を選びます。
安野玲さんの訳文が素晴らしくて冒頭部分からやられてしまいました。
ちくま文庫の『妖精族のむすめ』で読んだ際も好きな作品だったのですが、今回の安野訳ほどは夢中にならなかったのですよ。
好きな部分をちょっと引用させて戴きますと、

「おお、メリムナ、われらが都よ。メリムナ、城壁めぐらしたるわれらが都よ。
 メリムナよ、尖塔が数多そびえる汝のなんと麗しいことか。汝のためにわれらは現世(うつしよ)を、数々の王国を、可憐な花々をあとにした。汝のためにわれらはしばし天より舞いおりた。
 神の御前を離れるのはまことに容易ならぬこと。そこは暖かな火のごとく、安らかな眠りのごとく、輝かしき聖歌のごとくして、静けさに、光に満ちた静けさに包まれておるがゆえ。
 われらがしばし天を後にしたのは汝のためだ、メリムナよ。
 数知れぬ女をわれらは愛した、メリムナよ。だが、愛した都はただひとつ。
 さあ見るがよい、夢見る都人を、われらが愛した民を。その夢のなんと美しいことか! 夢の中では死せる者も息を吹き返す。遠い昔に命を落とし、黙したままの者さえも。
(以下略) (安野玲 訳 P25~26より引用。)

ダンセイニの筆で描かれる都市は滅びの予感を孕んでいるが故にどれも美しいのですが、メリムナほど愛された都はなかっただろうと思います。遠い夢の彼方に旅立ってしまったいにしえの英雄達を現世に呼び戻してしまうほどに。
読むほどにこの都市の美しさに浸ってしまい、20ページ程の短篇であるにもかかわらず読後に深い満足を味わいました。
驚異の都バブルクンドや行きつくことの叶わぬカルカソンヌにも心惹かれてやみません。
壮麗な都市に心を旅立たせてみたい方はぜひぜひ読んでみて下さいませ。

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