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2004.12.29

1月の新刊メモ

『火を喰う者たち』
デイヴィッド・アーモンドの新作。1月中旬発売予定。
訳は金原瑞人さん。
『バッテリーⅥ』
いよいよ最終巻ですね。
『イルカの家』
ローズマリー・サトクリフ作品には珍しく、少女が主人公の物語。
舞台は大航海時代の英国だとか。


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2004.12.28

2004年ベスト本

家守綺譚 犬は勘定に入れません 燈火節 蟲師

今年読んだ本で面白かった作品です。順不同。

<国内>

『家守綺譚』(梨木香歩)
淡々と美しい物語。語り口の小気味良さも大好き。季節の折々に読み返したくなりますね。
『象られた力』(飛浩隆)
凄まじいまでのイメージの奔流に酔わされました。
(→感想
『流血女神伝』(須賀しのぶ)
今年下半期で最もはまり込んで読んでおりました。波瀾万丈がお好きな方には大プッシュ。
(→感想 『帝国の娘』『砂の覇王』『女神の花嫁』『暗き神の鎖』『天気晴朗なれど波高し。』1

<海外>

『奇術師』(クリストファー・プリースト)
SF、ホラー、ミステリ、時代物の面白さをごった煮にしたような読後感でした。読者の予想を裏切る、良い意味で卑怯な作品かと。
『犬は勘定に入れません』(コニー・ウィリス)
錯綜した状況がつかめないまま読み進めていくうち、気がつけば作者の術中にはまってしまった作品。SFとミステリの良い部分がブレンドされていて、どちらのジャンルのファンにもアピールする魅力があるのではないかと思います。
『夢見る人の物語』(ロード・ダンセイニ)
『世界の涯の物語』(→感想)も凄く良いのですが、個人的な趣味でこちらを。
(→感想

<番外>

『文学賞メッタ斬り!』(大森望・豊崎由美)
今年一番笑わせて戴いた本です。ブックガイドとしても為になりました。
(→感想
『燈火節』(片山廣子・松村みね子)
自分にとって至宝の本です(勿体無くてまだ読了しておりませんが)。

<漫画>

『蟲師』(漆原友紀)
絵になりにくいものを巧みに描写する著者の力量に舌を巻きました。
『Under the Rose』(船戸明里)
登場人物のそれぞれが魅力なのですが、行く末が気になるのはやはりライナスかな。彼が心の底から笑える日が来ますように。
『PLUTO』(手塚治虫・浦沢直樹)
アトムにさほど興味が無かった筈なのに読んでみたら夢中になりました(笑)。続きが早く読みたいですな。

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めった斬りブックガイド既読調査

有里さま製作の『ライトノベル☆めった斬り!』公式サイト中のめった斬りブックガイド既読調査をやってみました。


002 (1980-p121-d),《クララ白書》《アグネス白書》氷室冴子(1980~1983)
003 (1980-p122-d),《ダーティペア》高千穂遙(1980~)
004 (1981-p123-d),《星へ行く船》新井素子(1981~1992)
006 (1982-p125-e),《銀河英雄伝説》田中芳樹(1982~1988)
008 (1983-p126-e),『少女小説家は死なない』氷室冴子(1983)
009 (1984-p128-c),《なんて素敵にジャパネスク》氷室冴子(1984~1991)
010 (1984-p129-c),《丘の家のミッキー》久美沙織(1984~1988)
011 (1984-p130-c),《妖精作戦》笹本祐一(1984~1985)
012 (1986-p131-d),《アルスラーン戦記》田中芳樹(1986~)
013 (1986-p131-b),《ガルディーン》火浦功(1986~)
014 (1987-p133-b),《ARIEL》笹本祐一(1987~2004)
015 (1987-p133-c),《創竜伝》田中芳樹(1987~)
016 (1988-p134-d),《エフェラ&ジリオラ》ひかわ玲子(1988~)
017 (1988-p135-e),《ロードス島戦記》水野良(1986~1993)
021 (1988-p138-c),《風の大陸》竹河聖(1988~)
023 (1989-p139-c),《ハイスクール・オーラバスター》若木未生(1989~)
024 (1989-p140-a),《フォーチュンクエスト》深沢美潮(1989~2003)
026 (1989-p141-c),《破妖の剣》前田珠子(1989~)
029 (1990-p168-b),《炎の蜃気楼》桑原水菜(1990~2004)
031 (1990-p169-e),《星虫》岩本隆雄(1990~)
034 (1991-p172-f),『ヘルメハイネの水晶の塔』井辻朱美(1991)
036 (1992-p173-b),《ヴィシュパ・ノール変異譚》水杜明珠(1992~)
037 (1992-p174-c),《十二国記》小野不由美(1992~)
039 (1993-p176-c),《デルフィニア戦記》茅田砂胡(1993~1998)
051 (1996-p186-c),《星界》森岡浩之(1996~)
058 (1997-p191-c),《西の善き魔女》荻原規子(1997~1999)
061 (1998-p193-a),《ブギーポップ》上遠野浩平(1998~)
064 (1998-p195-d),《マリア様がみてる》今野緒雪(1998~)
071 (1999-p201-c),《流血女神伝》須賀しのぶ(1999~)

100作品中29作品読んでました。思ってたよりは読んでいたんだな。
80~90年代の作品で稼いだって感じでしょうか(歳がバレバレだ。笑)。
一応ファンタジーファンの筈なのに『六番目の小夜子』を読んでない私って一体…(何となく機会を逃しているんですよね。この機会に読もうっと)。
こうしてリストにして貰うと自分の読書傾向がわかって面白いですね。

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2004.12.22

暗き神の鎖(須賀しのぶ)

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『暗き神の鎖』前・中・後編
須賀しのぶ 著、集英社コバルト文庫 刊

天真爛漫だったカリエにも背負うものや守らなくてはならないものが出来て、話にますます重みと深みが増しましたね。そして彼女を脅かす存在が物語にさらに影を落とします。リウジールがカリエを追い詰めていく辺りは読みながら自分までぞくりとしていましたが、ザカールの中でも異質な彼の言動にも理由があり、単なる敵役に終らず魅力的なキャラクターに書き込まれていたと思います。とても印象的でした。
今回は暗い・重い・痛い(精神面も肉体面も)の三拍子揃ったお話で、もう後編は読み進めるのがつらかった……。登場人物の殆どが大変な事になりましたし。まあ、お笑い担当(?)トルハーンとイーダル王子のお蔭でちょっとは息がつけましたけども。サルベーンとエディアルドのコスプレ(変装)にも脱力(爆笑)。ああいった状況でも笑いをさしはさむ余裕のある著者に完敗ですよ。
サルベーンと云えば、『女神の花嫁』(→感想)を読んで評価が上昇してまた下降したのですが、今回彼が取った行動には素直に拍手喝采。見直したよサルベーン!
次でいよいよ終了なのだそうですけれど、ああこの続きは一体どうなるんだ!と今から気になって仕方がありません。エティカヤ(とバルアン)はえらいことになりそうだし、ユリ・スカナも大変なようだし、おそらくこの流れでルトヴィア動乱が始まるのかな。カリエの人生もまだまだ落ち着かずに流転する模様。果たして波瀾万丈はどこまで続くのか?
続きが早く読みたくてたまらない一方で、ずっと終って欲しくない複雑な気分です。あと10冊くらいは続いてくれると嬉しいんだけどなぁ(笑)。

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ライトノベル☆めった斬り!(大森望・三村美衣)

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『ライトノベル☆めった斬り!』
大森望・三村美衣 著、太田出版 刊

「ライトノベル」のジャンルに入る作品にはこのところ殆ど縁がありません。
面白そうだなと感じる作品はかなりあるのですが、なんとなく敷居が高い(自分の年齢が・笑)もので、特定の作家以外は手を出しかねておりました。
そういった意識の低い読者がこのような本を読んでもいいものだろうか…と思わないではなかったのですが、現在の人気作品だけでなく、自分がリアルタイムで楽しんでいた作品にかなりのページ数が割かれていたので購入。現在、ジャンルとして勢いのあるライトノベルも一日にしてなった訳ではないことが読んでみてよくわかりました。
ライトノベル(及びその出版界)の通史部分と書評部分が対談形式で語られていて楽しめました。おふたりともこのジャンルの第一人者だけあって、対談部分の熱さ(ヲタク語り?笑)は素晴らしいの一言に尽きますね。SF部分の語りが詳細なのはおふたりの経歴を見ればわかりますが、BLまでしっかり把握している大森さんには脱帽。
細かい所では、『星の海のミッキー』(ヴォンダ・マッキンタイア)の翻訳タイトルの元ネタが「丘みき」だったとわかったのは思いもかけない収穫でした(ずっと気になっていたので)。角川お家騒動に関しても言及があって勉強になりました。やはり傑出した存在だったのですね、角川春樹氏って(良くも悪くも)。

この中で語られなかった部分をこれから語る人々が出てくるだろうと云う点でも、この本を出版した意義は大きいと思います。ライトノベル評の基礎固めとなる本と云っても過言ではないかと。
個人的にはライトノベルFT系作品の通史及びブックガイドのような本が出てくれないものかと思っていますがはてさて。「帝都物語」と「陰陽師」、安部晴明ブームがライトノベルにもたらした影響なんかにも興味があるんですが、どなたかまとめては下さらぬものか。

公式サイトはこちらから。
めった斬りブックガイド既読調査など充実したコンテンツが楽しめます。

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2004.12.18

荊の城(サラ・ウォーターズ)

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『荊の城』上下巻
サラ・ウォーターズ 著、中村有希 訳、創元推理文庫 刊

19世紀半ばのロンドン。下町の故買屋に暮らす17歳の少女スウは知人の詐欺師<紳士>から仕事を持ちかけられる。彼は郊外の城館に暮らす深窓の令嬢モード・リリーと結婚し、財産を奪う計画を立てていた。スウの役目は彼を手伝う為にモードの新しい侍女として城に入り込む事。迷いながらも儲け話に乗った彼女は、マーロウのブライア城へと向かう。訪れる客も少ない陰鬱な城の中で同じ年頃のふたりは日毎に親密さを増していくのだが、<紳士>がモードを連れ出す決行の日は迫ってきていた…。

スウとモードが交互に語り手となり、物語を進めていく手法が見事。
二転三転する物語、張り巡らされた巧妙な罠、抑圧された官能。猥雑なロンドンのざわめきとブライア城の閉ざされた静謐。そしてふたりの主人公の愛憎。語りの巧さに操られるようにして一気に読んでしまいました。テンポの良い翻訳も魅力的。
ヴィクトリア朝ロンドンの描写も素晴らしく、デイケンズと同時代人と云われたら思わず信じてしまいそうです。時代考証がしっかりしているのでミステリだけではなく、時代物としても非常にレヴェルが高い作品ですね。英国推理作家協会賞の歴史ミステリ部門の受賞もさもありなん。
結末のつけ方には少し疑問も残りますけれど、ありきたりの結末にしなかった著者の気概が感じられて良かったと思います。

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2004.12.14

映画 ハウルの動く城

観てきましたよハウル。ええもう無理矢理時間を作ってでも行かねば今年中には観られないので。

原作至上主義の自分としては「ハウルの動く城」なんですが、映画は「ハウルの動く城」なんですね!(笑)
いや確かに感動しましたよ、あの城ががっしょんがっしょん(←擬音?)動くさまには!!
すげえよカルっち頑張ってるね~と心の中でスタンディングオベーションでしたよ(笑)。
映像的な部分では「凄い凄い!」の連発でございました。
しょっぱなの空中浮遊のシーンとか、城から見下ろす下界の様子とか、ヨーロッパの色々な国を品良くごった煮にしたような街並みとか、細部に関する執拗とさえ云えるような描写とか(石畳の一枚一枚の質感すら感じさせられました)。
物語の方はですねぇ…。
原作とはしっかりはっきりきっぱり別物だから!と割り切って観に行ったので楽しめた事は楽しめました。ロマンス色がかなり強めですね。これが「戦火のメロドラマ」なのね…としみじみ。90歳でもソフィー乙女モード全開ですわ! 美人じゃないとか云ってて後半凄く可愛くなってるよ。これってやっぱり恋の魔法?(笑)
ハウルは聞きしに勝る美形振りでございましたな。いやはや、ハンサムさんですね~。びっくり。
個人的見解としてはマダム・サリマンはもっと黒くても良かったと思いました。ちょっと物足りなかったかも。あとレティーの化粧は濃すぎだ(笑)。
そうそう、思ったより木村拓哉氏悪くなかったですよ。でも一番芸達者だなと思ったのはマルクル役の子(笑)。美輪様の活躍が思ったより少なかったのは残念でした。しょぼん(肩を落としつつ)。

あ、ひとつキャッチコピーに対して物申したい事があるんですけど云っていいですかね?
「ふたりが暮らした。」じゃなくて、「ふたり(といたいけな子供と要介護のおばあちゃんと犬とかかしと火の悪魔)が暮らした。」だと思うんですけどどうですか!(←どうですかと云われても)


以下は映画のネタバレを含む感想ですのでまだ御覧になっていない方は読まぬほうが吉。

まずハウルに関して。
映画版のハウルって、ソフィーに徹頭徹尾優しいんですよね…。物凄く紳士なんですよ(不満)。甘い言葉もくれるし、何て云いますかわかり易い王子様キャラって感じで。のらりくらりとしてつかみ所が無くて怠け者でわがままで駄々っ子で癇癪持ち(映画でもソフィーが風呂場をいじった時は癇癪起こしてましたが)な原作ハウル(27歳)とはえらい違いだよ。ああ、あんないい人ハウルじゃないわ…。「失礼ですけど本当にハウルさんですか?」と尋ねたくなってしまいましたがな(笑)。
ソフィーは健気に頑張るヒロインなんですけど、面と向かってハウルとやり合う原作ソフィーに快哉を挙げていた自分としては、映画版ソフィーは正直物足りなかったですよ。
大仰に出てきた割に荒地の魔女が小物にされてるのも何だかなぁ。せっかく美輪様がお声をあててらっしゃるのに!(←私怨) まぁ、好々爺ならぬ好々婆(?)っぷりも趣深くはございましたけれども。
その分マダム・サリマンががっつりやってくれるのかと期待してたら思いのほか引き際が良いし、カブの呪いもつけたしの様ですし。
原作の面白さは通常の役割分担を引っくり返す痛快さにあると思います。それによって錯綜した物語が収束していく所が読んでいて本当に小気味良かったんですが、映画版ではそのカタルシスが味わえなかったのが残念でした。
ハウルとカルシファーの契約の事情は結構込み入っていて、そこらへんは原作ではきちんと書き込まれているのですけれど、映画を見ただけではなんだかよくわからない様な気がします。つーか、色んな事情をはしょり過ぎだと思う…。

原作が長女と云う呪縛から自分を解き放つ少女の物語なら、映画は少年が大人になる為の物語だと解釈すれば宜しいのかな。戦争の名のもとにハウルを自分の支配下におこうとするサリマンと、彼女から逃げ出そうとするハウル。
実はこの話、強力な母親(マダム・サリマン)の影響(もしくは呪縛)から逃れようとする少年が自分の弱さも含めて受け入れてくれる少女(「あの人は弱虫でいい」って云ってますものね)と出会って、自らを変える物語なのではなかろうかと感じました。少年が大人の男になる為の通過儀礼を描いた物語だとすると、マダム・サリマンの引き際の良さにもまあ納得が行くんですよ。
故に設定やら登場人物の名前やらを共有していても、原作者と宮崎監督の語りたい事は方向性が全く違うのだと思います。そもそもの方向性が違うんだから、下手に原作の設定を切り貼りするような表現にしなくても、開き直って完璧な別物として好きなように作っちゃったほうがアニメとしては面白かったのではないかと思いますね。あと、監督が大好きな『クラバート』のモティーフ(魔の領域に踏み込んでしまった少年を救う少女のイメージ)を使いたかったのは良くわかりましたけど、エピソードとしてあんまり綺麗に繋がっていないような気がしなかったのは残念。いささか唐突な感がございましたよ…。

原作の映像化としてはやはり不満なのですが、ファンタジーとしての隠喩には満ちていたので興味深く鑑賞はできました。でも、物語の面白さではやっぱり原作の方が上だなぁ。所詮ワタクシ原作至上主義なので(笑)。
細かい事引っ掻き回して勝手に妄想して悦に入ってるんじゃない!とお思いの方には申し訳ありませんでした。こういう風な受け手もいるのね~と心広くさらっと流してやって下されば幸い。

原作本の感想はこちら


(2004/11/30→12/14)

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2004.12.07

女神の花嫁(須賀しのぶ)

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『女神の花嫁』前・中・後編
須賀しのぶ 著、集英社コバルト文庫 刊

謎が多かった(と云うか謎ばかりだった)ザカールの国のあり方と人々についてこの話を読んでようやく理解できたように思えます。特殊な民族だと思い込んでいたザカール人の内部に踏み込んでみれば、彼らには彼らの当然の理があったのだなぁと、わかりやすい形で納得できました。
私が「流血女神伝」を架空歴史物としてよりもファンタジーとして認識しているのは、神と人の関わりについて描かれている点にあるのですが、『砂の覇王』で語られた両者の関係をさらに掘り下げていますね。
神の手の内で操られているのか、それとも自分の意志で選んだ道を歩んでいるのか。本篇で繰り返し問われるこの疑問がこの作品でも視点を変えて問われています。もっともっと踏み込んで書いて戴きたいのですが、少女向けレーヴェルではそうも行かないのでしょうか。著者がレーヴェルの制約が無い状況で神と人との物語を書いたら物凄い作品が読めると思うんですけど(物のわかってない只の読者なので好き勝手な事を云ってます…)。
登場人物達の迷いや苦しみが切実である分、読んでいて痛々しくなる箇所がいくつもあって読んでいるこちらも消耗しました。特に主人公のラクリゼが人生の岐路において選択しなくてはならない事柄があまりにも苛酷なので読んでるこっちもつらいんですよ。彼女には幸せになって欲しいのですがどうだろう……。
主軸とは異なる視点で同じ出来事を描写している箇所がいくつかあるので、本篇と読み比べてみるのもまた一興。物語がよりいっそう立体的に浮かび上がってくるかと思います。シリーズを最初から読み返したくなる衝動に駆られてしまう事受け合い。
蛇足ながら最後に出てくる新米海賊がなかなか良い役どころでした。

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2004.12.06

天気晴朗なれど波高し。2(須賀しのぶ)

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『天気晴朗なれど波高し。2』
須賀しのぶ 著、集英社コバルト文庫 刊

晴れて士官となったランゾットに次なる試練が与えられる。海神ワーデンに捧げる祭りで芸を披露しなくてはならないのだ。兄達が昔踊ったと云うグンダホア・ジンガ──この奇妙な舞を奉納(?)する羽目になったランゾットはコーアと共に厳しい練習に励む事となるが…。

グンダホア・ジンガ(爆笑)に惑わされて見失いがちなのですが、ちょっとしんみりしながらも波瀾万丈で楽しませてくれる話でした。著者はアホと波瀾万丈を書かせたら右に出る者無しって感じですなぁ(笑)。
今回はランゾットとコーアを巡る女性達が魅力的でしたね!
ガゼッタ公国一の美女ネイ様の再登場も嬉しいのですが、今回登場したオレンディア嬢の気風が良くて健気な所も良かった~。須賀さんの書かれる女性は筋の通し方がきっちりしていて素敵。オレンディア嬢はランゾットのこれからにも深く関わってくるようなので(本篇にも出てくるのかな?)、再登場が楽しみです。

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天気晴朗なれど波高し。(須賀しのぶ)

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『天気晴朗なれど波高し。』
須賀しのぶ 著、集英社コバルト文庫 刊

名門ギアス家の三男として生まれたランゾットは小説家志望だが、不本意ながら海軍への入隊が決まっていた。出発前夜、酒場で陸軍との喧嘩騒ぎに巻き込まれた彼は、同じ艦に乗ると云う士官候補生トルヴァン・コーアと出会う…。

飄々として得体の知れないギアス海佐の若かりし頃の話ってんで、一体どんな話になるのやらと訝しんでおったのですが、なかなかどうして真っ当な青春小説じゃございませんか! かえってびっくりしましたよ…。
乱暴な要約をするのであれば、渋々ながら海軍に入隊した青年が波乱含みの(波乱まみれの?)初航海を経て、自分の歩く道を見出す話って所でしょうか。年上の女性への淡い恋心、海軍生活の活き活きとした描写、軍船という閉じられた空間での人間模様そして陰謀などなど、1冊の中に様々な要素が詰め込まれております。著者のテンポの良い筆致に乗せられて楽しく読ませて戴きました。それにしても、17歳であの達観振りはやはりと云うか流石と云うか。入隊する前から引退の事を考えてる士官候補生ってさぁ!(笑)
勿論若き日のトルハーンも活躍しています。底抜けに明るいかと思いきや、様々な苦難を乗り越えてきた横顔も垣間見せてくれたりして。ランゾットとコーア、ふたりのかけあい漫才…もとい篤き友情(笑)も見所です。

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2004.12.04

砂の覇王(須賀しのぶ)

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『砂の覇王』全9巻
須賀しのぶ 著、集英社コバルト文庫 刊

エディアルドと共にカデーレを脱出したカリエ。
旅の途中で高熱を出したエディアルドを休ませる為に一夜の宿を求めた民家では、思いもかけない罠が彼女を待ち受けていた…。

今回の主な舞台となるエティカヤを中心に、ルトヴイア、ユリ・スカナと三国の内情が徐々に明かされていきます。
どの国も一枚岩ではなく、かろうじて均衡を保っている情勢の危うさが物語の緊迫感をよりいっそう深めていました。かと云って政治色に傾くでなく面白く読めてしまうのは著者のバランス感覚の賜物ですね。
奴隷となってしまったカリエとエディアルド、苦悩を抱えながらも奮闘するドミトリアスとグラーシカ、謎めいた言動のサルベーンにラクリゼなど、『帝国の娘』(→感想)でお馴染みの面々のその後も言及されていて嬉しかったのですが、新規参入の登場人物も負けず劣らず魅力的でした。バルアンの後宮の女性達、イーダル王子やタウラ(ユリ・スカナの方々は美人ばかりで読んでいて楽しいな!)、海賊トルハーンや副長ソード、ギアス海佐ら海の男達。大所帯になりながらもそれぞれの表情が浮かび上がってくるような豊かで賑やかな文章をわくわくしながら読み進めました。
全巻を通じて心に残ったのはヒカイ将軍とラハジル・ジィキのエピソードで、この二人とバルアンの絡ませ方がとても印象的でした。カリエ達メインキャストの動向よりも、彼らの過去の経緯の方が気になって仕方なかった自分は読者として間違った道を進んでいたような気がします…などと云う個人的な話はともかくとして、人と神との関わりは次回作以降でまた語られるのでしょうか。その辺がとても気になっています。
奴隷から始まるカリエの変幻自在でコスプレ満載な流転人生(笑)のとりあえずの決着のつけ方もお見事。
仮にも十代の女の子が主人公の物語を読んでいて、不撓不屈とか満身創痍とか捲土重来とかの言葉が思い浮かぶのはどうかと思うんですが、実際そうなんだから仕方がない(笑)。実の所、このレーベルでここまでハードな物語が展開されているとは思いもしませんでした。まったく驚いたのなんのって。
不運に叩かれても倒されても不屈の闘志を持って立ち上がる主人公カリエの男前さ(笑)には素直に拍手喝采したい気持ちになります。彼女のこれからの生き様も非常に楽しみ。
架空歴史物としてもファンタジーとしても主人公の成長物語としても骨太で読み応えのある作品だと思いますので、未読の方は是非どうぞ。強力にお薦め致します!

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