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2004.12.04

砂の覇王(須賀しのぶ)

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『砂の覇王』全9巻
須賀しのぶ 著、集英社コバルト文庫 刊

エディアルドと共にカデーレを脱出したカリエ。
旅の途中で高熱を出したエディアルドを休ませる為に一夜の宿を求めた民家では、思いもかけない罠が彼女を待ち受けていた…。

今回の主な舞台となるエティカヤを中心に、ルトヴイア、ユリ・スカナと三国の内情が徐々に明かされていきます。
どの国も一枚岩ではなく、かろうじて均衡を保っている情勢の危うさが物語の緊迫感をよりいっそう深めていました。かと云って政治色に傾くでなく面白く読めてしまうのは著者のバランス感覚の賜物ですね。
奴隷となってしまったカリエとエディアルド、苦悩を抱えながらも奮闘するドミトリアスとグラーシカ、謎めいた言動のサルベーンにラクリゼなど、『帝国の娘』(→感想)でお馴染みの面々のその後も言及されていて嬉しかったのですが、新規参入の登場人物も負けず劣らず魅力的でした。バルアンの後宮の女性達、イーダル王子やタウラ(ユリ・スカナの方々は美人ばかりで読んでいて楽しいな!)、海賊トルハーンや副長ソード、ギアス海佐ら海の男達。大所帯になりながらもそれぞれの表情が浮かび上がってくるような豊かで賑やかな文章をわくわくしながら読み進めました。
全巻を通じて心に残ったのはヒカイ将軍とラハジル・ジィキのエピソードで、この二人とバルアンの絡ませ方がとても印象的でした。カリエ達メインキャストの動向よりも、彼らの過去の経緯の方が気になって仕方なかった自分は読者として間違った道を進んでいたような気がします…などと云う個人的な話はともかくとして、人と神との関わりは次回作以降でまた語られるのでしょうか。その辺がとても気になっています。
奴隷から始まるカリエの変幻自在でコスプレ満載な流転人生(笑)のとりあえずの決着のつけ方もお見事。
仮にも十代の女の子が主人公の物語を読んでいて、不撓不屈とか満身創痍とか捲土重来とかの言葉が思い浮かぶのはどうかと思うんですが、実際そうなんだから仕方がない(笑)。実の所、このレーベルでここまでハードな物語が展開されているとは思いもしませんでした。まったく驚いたのなんのって。
不運に叩かれても倒されても不屈の闘志を持って立ち上がる主人公カリエの男前さ(笑)には素直に拍手喝采したい気持ちになります。彼女のこれからの生き様も非常に楽しみ。
架空歴史物としてもファンタジーとしても主人公の成長物語としても骨太で読み応えのある作品だと思いますので、未読の方は是非どうぞ。強力にお薦め致します!

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