荊の城(サラ・ウォーターズ)
『荊の城』上・下巻
サラ・ウォーターズ 著、中村有希 訳、創元推理文庫 刊
19世紀半ばのロンドン。下町の故買屋に暮らす17歳の少女スウは知人の詐欺師<紳士>から仕事を持ちかけられる。彼は郊外の城館に暮らす深窓の令嬢モード・リリーと結婚し、財産を奪う計画を立てていた。スウの役目は彼を手伝う為にモードの新しい侍女として城に入り込む事。迷いながらも儲け話に乗った彼女は、マーロウのブライア城へと向かう。訪れる客も少ない陰鬱な城の中で同じ年頃のふたりは日毎に親密さを増していくのだが、<紳士>がモードを連れ出す決行の日は迫ってきていた…。
スウとモードが交互に語り手となり、物語を進めていく手法が見事。
二転三転する物語、張り巡らされた巧妙な罠、抑圧された官能。猥雑なロンドンのざわめきとブライア城の閉ざされた静謐。そしてふたりの主人公の愛憎。語りの巧さに操られるようにして一気に読んでしまいました。テンポの良い翻訳も魅力的。
ヴィクトリア朝ロンドンの描写も素晴らしく、デイケンズと同時代人と云われたら思わず信じてしまいそうです。時代考証がしっかりしているのでミステリだけではなく、時代物としても非常にレヴェルが高い作品ですね。英国推理作家協会賞の歴史ミステリ部門の受賞もさもありなん。
結末のつけ方には少し疑問も残りますけれど、ありきたりの結末にしなかった著者の気概が感じられて良かったと思います。




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