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2005.04.02

デイヴィッド・アーモンド+金原瑞人トークショウ  --デイヴィッド・アーモンドが描く「奇跡」とは--

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池袋ジュンク堂でのトークセッションに行って参りました。
自分の脳内のキャパシティを遙かに超える充実したセッションだったもので、不完全な部分や時系列に沿っていない箇所が多々あるかと思います。御承知置き戴ければ幸い。

メインは作品に関するお話と『火を喰う者たち』の朗読。
アーモンドの作品は彼の子供時代の体験による所が多く、その思い出を色々と語って下さいました。
サッカーに夢中だった少年時代も、ただサッカーをしているだけではなく、大きなスタジアムで有名な選手になってプレイしているつもりになっていたり、大作家になって図書館に自分の本が並んでいる想像をしてみたり(後年、作家になって図書館に自分の本が並んでいるを見た時には少年時代の気持ちに戻って興奮したそうです)とか。
少年時代の自分に助けられて作家になったとの言葉が印象的でした。
作家になってからも様々な作品を書いてきたものの、そのどれもが大成功とは云えなかったそうなのですが、通りを歩いていた際にひらめいた物語が『肩胛骨は翼のなごり』で、この作品を書いている間中自然に言葉が生まれ続け、少年時代と同じような想像力があった事に気付いたそうです。イマジネーションは誰の心の中にもあるものだとも仰有ってました。
現在では確たる地位の作家として認められていますが、初めて書いた小説は出版社に相手にされず、周囲の人たちには作家になる事を諦めるように忠告されたけれど、自分の夢を諦めずに書き続けたからこそ今の自分がある、作家を目指す若い人達も諦める事無く、自分の思いを貫いて欲しいとのアドヴァイスも。
『肩胛骨~』を夢中で書き続けている間、この物語が子供向けの本だと云う事に気付き、作品が認められて児童文学作家として認識された時には解放感を味わったそうです。このエピソードを聞いた時、アーモンドが子供の本を書く事に本当に誇りを持っているのだと感じました。
その後に「物語と云うものは読み手の中で成長するもので、本として完成した後でも形を変えてまた成長していく」(かなりうろ覚えですがこういったニュアンスだったと思う)、とも云っていたのですが、これは彼が子供の為の物語を書く理由のひとつでもあるのかなぁ、とつらつら考えてみたりもしました。
成長していく子供たちに向けて物語を書くという事は、それを読んだ彼らの中でもまた物語が成長していく事になる訳で、柔らかい心の中で成長する物語はどんな色合いを持つのだろう、もしも自分が子供時代にアーモンドの本を読んでいたらどんな感想を持っただろうかとも考えずにはいられませんでした。子供の理解の仕方と大人の理解の仕方はかなり違っていると思いますし、そうであって当然なのですが、最も大切な部分はおそらく年齢を超えて理解できるもので、少なくともアーモンドの作品はそういった力を持っていると思います。

話がかなり反れましたが。
物語が成長する具体的な例として、『肩胛骨~』が舞台化された事が挙げられていました。まず、本として出発した作品が翻訳として成長し、英国で舞台化され、そして今度は日本でも舞台化されるとの事。
12月頃に公開されるそうなので、機会に恵まれれば形を変えた物語の姿を観てみたいです。
脚本は著者自身の手によるもので、以前に戯曲『Wild Girl, Wild Boy』を書いた為、戯曲化自体には戸惑いはなく、特別なプロセスは使っていない、また自分の作品は台詞や状況説明が多いので戯曲にはしやすいのではないか、との事。ただ、戯曲を書く際には舞台をきちんと想定して書いているそうです。

アーモンドの作品の殆どはファンタジーとしての側面を取り上げられる事が多く、私もそういった部分に強く心を惹かれているのですが、著者はファンタジックな部分も現実的に理解できるよう(舞台となる土地を特定化したり、地名を具体的にしたり)リアリティの部分を重要視しているそうで、本を読んで新しい世界を得たいと思っている読者の為にも具体的なイメージを書く事に腐心しているそうです。
特に最新作『火を喰う者たち』では、戦争の危機を描く為に今までの作品よりもリアル色を強めたそうで、現実性が強かった分、幻想的な部分のリアリティも強固になった印象を受けました。祈りがもたらした奇跡(だったかもしれないし、そうでないかもしれないもの)を読み手にきちんと受け入れられるように描けたのは、主人公ボビーたちの地に足がついた生活をしっかりと書き込んでいたからなのだと思います。
そして待望の新作は“clay”と云うタイトルで、英国では11月に出版の予定。
少年が土くれ(粘土)で作ったものが本物になる話で、こちらもリアル色が強くなっているそうです。土くれから生き物を作り出し、最終的には人間を作り、それが動き出す物語にいかに説得力を持たせるか、触感として感じられる作品に仕上げるために苦労したとの創作上のエピソードを語ってくれました。粘土で何かを作る少年と云うと、『ヘヴンアイズ』のウィルソン少年を思い出すのですが、どんな感じの物語になるのか今から楽しみ。
翻訳の予定はまだ立っていないので、河出と東京創元社のどちらになるかはまだ未定(笑)とは金原先生の談でした。なお、河出書房新社からは短篇集『counting stars』(UK版・US版)の翻訳刊行が決定したそうでこちらも楽しみです。

最後に『火を喰う者たち』の52章の朗読。はじめに金原先生が日本語訳を読んで下さって、その後著者自らが朗読して下さいました。英語のヒアリング能力が乏しいもので、手持ちのペーパーバックを目で追いながら聴いていました。彼の文章は朗読にぴったりで英語が不自由ながらも楽しんで聴いていましたが、音になった時にどうなるか考えてから書くとの言には納得。独特のリズムにはこんな秘密があったのか~と感動しました。

質疑応答の後にサイン会があったので、購入した『火を喰う者たち』と『ヘヴンアイズ』に自宅から持ってきたUK版ペーパーバックの『The Fire-Eaters』にサインを戴きました。終った後に握手までして下さったのですが、大きくて柔らかくて温かい手で作品から受ける人柄のイメージそのままでしたよ。こんな素晴らしい時間を得られた事はひとつの奇跡かもしれないな、と思いながら帰宅しました。
この企画に携わった様々な方達に感謝致します。素敵な時間を過ごさせて下さって本当に有難うございました!

デイヴィッド・アーモンドの既刊(翻訳書)は以下の通り。

『肩胛骨は翼のなごり』(山田順子 訳、東京創元社 刊)
『闇の底のシルキー』(山田順子 訳、東京創元社 刊)
『ヘヴンアイズ』(金原瑞人訳、河出書房新社 刊)
『秘密の心臓』(山田順子 訳、東京創元社 刊)
『火を喰う者たち』(金原瑞人訳、河出書房新社 刊)

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