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2005.06.19

ジーヴズの事件簿 (P・G・ウッドハウス)

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『ジーヴズの事件簿』
P・G・ウッドハウス 著、岩永正勝・小山太一 訳、文藝春秋 刊


ウースター様がここまで物事に執着なさるのは、めったにないことです。私がずばり不承知と申し上げた藤色の靴下をどうしてもお召しになりたいと言い張られたとき以来ではありませんか。しかし、あの件は私がうまく処理いたしましたし、本件も最後には満足の行く方向に持って行けることには何の不安もありませんでした。ご主人とは馬のようなものであって、調教が肝心なのです。紳士に仕える紳士のうちにも、調教のこつを心得ているものもおれば、いないものもおります。幸いなことに、私はこの点ではなんら不足するものはありません。

(同書 P324 「バーティ君の変心」より引用)


『比類なきジーヴス』と重複しているのは第二話から九話まで。読み比べてみるのも興味深いかと。
個人的な印象は文春版の方がくだけた語り口で読みやすいように思いますが、バーティに対する愛情は国書刊行会版の方が上かな?とも感じます。森村訳の方が可愛気のあるアホっぽいんだよね(※褒めてます)。
「ジーヴズの初仕事」、「バーティ君の変心」、「ジーヴズと白鳥の湖」、「ジーヴズと降誕祭気分」は今のところ国書刊行会版とはだぶっておりません。
そしてジーヴズシリーズの原型と云える「ガッシー救出作戦」も入っているのでお買い得ですよ~。


今回の収録作品中で一番印象に残っているのはジーヴズ自身が語り手となる「バーティ君の変心」。バーティの唐突な決意にまつわる事件の顛末とジーヴズの絶妙な手腕を描いております。
藤色の靴下ってのは「ジーヴズと駆け出し俳優」でのあの靴下の事か。意外と執念深いのねジーヴズってば(笑)。自分の選んだものでないと主人には身につけさせたくない、そんな切ない男心が切実に伝わってきますわ~。しっかし、蔭でバカ呼ばわりしてる(※「ジーヴズとグロソップ一家」参照)かと思えば、今度は馬扱いですか馬!
ジーヴズがバーティをアホ呼ばわりするのは愛情の発露なんでしょうけど、馬はいくらなんでも酷いんじゃ……。
ま、ジーヴズ自身の口からのお惚気は愉快極まりないのですけども。以下はお惚気の数々でございます。


知性的には取るに足らないウースター様ですが、ウースターというお名前の響きは無限の可能性を秘めています。(P328)
ウースター様は、ただひとつを除くすべての好ましい資質を備えたお若い方です。もっとも、そのひとつとは頭脳のことではありません。(中略)非常事態に遭遇なさると、ウースター様はすぐに気弱な笑みを浮かべて目の玉を飛び出させてしまわれます。貫禄といったものが皆無なのです。(P334)
あの方のお顔は、外から読めないような謎めいたものではありません。逆に、ちょっとした心の揺れも刻々と分かる、澄み切った水のようなお顔なのです。(P338)


どうですよ、この愛されっぷり!
いいなぁ、バーティーはジーヴズに熱愛(←?)されてて。心底羨ましいですわ(溜息)。
ちょっとどころでなくかなりジェラシーを感じます(笑)。

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