ポーの話 (いしいしんじ)
『ポーの話』
いしいしんじ 著、新潮社 刊
「そらは、でかいはしなのです」
人形のおだやかな声が耳の奥にひびく。
「みずやくうき、たいようやほしのひかり。そのほか、ふつうの目にみえないもの、たくさんわたっていきます。目にみえないばしょへもつながっている。おれたちのいるところ、ポーにみえてるより、よっぽどおおきい。よっぽどふかいです。ポー、わかりますか」
(同書 P299より引用)
いしいしんじさんの久々の長篇。
今迄の作品よりも視点が随分大きいなぁというのが率直な感想でしょうか。
『麦踏みクーツェ』を読むと自分が踏みしめている大地が、『プラネタリウムのふたご』を読むと見上げる夜空がいとおしくなるような気持ちになりましたが、『ポーの話』は生き物すべてを包括する世界を描いている分、読み手の視点も俯瞰的になるように感じます。私は引用部分を読んだ時にようやくこの物語の大きさが胸に響いてきました。
そして何よりも「水」についての物語であったかなと。
世界をめぐり命の中をめぐる水の変奏が様々な場面で言及されていたのが印象的でした。
水が形を変えてどこまでも旅をして行くように、ポーも色々な場所を旅して行きます。
辿り着いた場所で彼は「橋をかける」のですが、この辺りのイメージの広がり具合がまた凄いですね。
一見ばらばらに思える人々や土地がポーの存在によって鮮やかに繋がって行くのも、彼が架け渡した橋があったからこそだったのかと思ってみたり。
水と命と人の営みを眺める事によって、世界のぐるりを見渡したような気分になりました。
足下がおぼつかなくて不安なような、それでいてひとりではなく何かに守られているような不思議な読後感の物語でした。






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