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2005.12.31

エムズワース卿の受難録 (P・G・ウッドハウス)

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『エムズワース卿の受難録』
P.G.ウッドハウス 著 、岩永 正勝 ・小山 太一 編訳、文藝春秋 刊


 ロード・エムズワースは大きく溜息をついた。うんざりして息子を眺めやり、いくらフレディがその道の名人だとはいえ、こう若い者が次から次へと騒動を起こす力を持っているのはたまらんと嘆いた。(中略) うんと昔、まだほんの子供だったころ、ご多分にもれず空想好きだった伯爵は、これほど古い家柄なのにどうしてうちには一家伝来の呪いがないんだろうと悔しがったことがある。思いきや、今ごろになって呪いの生みの親に自分がなろうとは。
(同書 P51より引用)


イングランドはシュロップシャーのブランディングズ城に住む夢見がちで綿菓子のような頭脳を持つ第九代エムズワース伯爵は、平穏な生活と美しい庭をこよなく愛する人物なのだが、彼の領内に持ち込まれるのはいつもいつも騒動ばかり。のどかと云う言葉とは無縁な老伯爵の田園生活は、トラブルメイカーの息子や恋に身を焦がす姪たち、恐るべき妹の襲来で御難続きのものになる……。


おっとりのほほんとした愛くるしさを持つ老伯爵、ロード・エムズワース。
自分の城たるブランディングズで豚やカボチャや美しい花々とたわむれつつ静かな暮らしをしたいだけなのに、周りの状況がそれを全く許してはくれないのです。ああ、彼こそを喜劇 悲劇のヒーローと呼ばずして何と呼びましょうか!
しかし、最強の妹レイディ・コンスタンスや一家伝来の呪い扱いされている(笑)次男フレディに振り回されてあたふたおたおたしている姿はこの上なくキュートなんですけども。
そして、彼を翻弄するのは血縁関係者ばかりではありません。やり手な庭師アンガス・マカリスターのスコットランド魂との熱き攻防戦や、有能執事ビーチの去就問題にもそのふんわりとした脳味噌を悩ませているのです。
最後にはまとまるべきところにまとまるとわかっていても、毎度毎度起こる事件のたびにロード・エムズワースの運命に気を揉んでしまいます。ああクラレンス、あなたってなんて罪な人……(笑)。
そんな彼の活躍(?)を収めた短篇集ですが、個人的に一番のお気に入りはちょっと長めの「ブランディングズ城を襲う無法の嵐」です。
ロード・エムズワースの孫、ジョージが持ち込んだ一挺の空気銃が住人たちに与えた恐ろしい影響、謎は謎を呼び、平和だったブランディングズ城に疑惑と疑念の嵐が吹き荒れる……。(※若干誇張あり)
この話で一番の被害者はやっぱりルパート・バクスターなんだろうなぁ。あんまり可哀相じゃないんだけど(笑)。

収録作品のどれもおかしくて好きな話なのですが、たったひとつ不満を挙げさせて戴けるのならば、ブランディングズ城のいとやんごとなき貴婦人、「ブランディングズの女帝」陛下の出番が思っていたよりも少なかった事でしょうか。ちょっとどころではなく非常にがっかりです(嘆息)。
長篇作品も読んでみたいなぁ。


特別収録の「天翔けるフレッド叔父さん」は、エムズワース卿ものとの関わりが深いのだそうで、豪快で破天荒なフレッド叔父さんが巻き起こす珍事件とそれに巻き込まれる甥のポンゴの苦悩を描いた作品です。こちらも爆笑必至。

トラブルメイカーたちが繰り広げる騒動の数々がみっしりと詰まった大変に愉快な一冊です。
年末年始のお休み中、ごろごろしながらの楽しい読書に最適かも?

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Comments

こちら、おもしろそうですね。
よい情報をいただきました。
今年はたくさん本を読もうと決めたのですが、新年早々なかなか難しいものです。
2月に入ったらゆっくり読んでみようと思います。

Posted by: double face-d | 2006.01.10 at 04:27 PM

double face-d さま

以前に『沼地のある森を抜けて』のコメントとトラックバック戴いておりましたね。
その節は有難うございました~。
読ませていただきました!
こちらは更新頻度が少ないのであまり覗いていない為、なかなかコメントをお返しできなくて申し訳ありません……。

『エムズワース卿の受難録』はくすくす笑いがとまらない愉快な短篇集ですので、じっくりゆっくり楽しんで戴きたいです。
もしも可能なようでしたら、カヴァーをはずして本の本体部分も御覧になって見てくださいね。
いと高貴なる貴婦人の御姿がそこに!(笑)
書影には出ていなせんが、帯も凄くキュートです。

Posted by: 羽鳥 | 2006.01.17 at 03:02 PM

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