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2006.01.26

オラクル サソリの神1 (キャサリン・フィッシャー)

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『オラクル─巫女ミラニィの冒険 サソリの神1』
キャサリン・フィッシャー 著、井辻朱美 訳、原書房 刊


「あんたがアルコンになったら、光の下であんたの影が後ろにできたら、おいらのことを思い出しておくれ。おいらのおいらの王国のことを。おいらも王国のあるじだ。それは、いっさいがっさいがあんたの王国のうつしであるような王国だ。あんたの裏返しの王国といってもいいかな」
(同書 P354より引用)


未曾有の旱魃に襲われている<二つの国>。
巫女ミラニィは雨乞いの儀式の為に間もなく死を迎える老アルコンから、将軍アルジェリンと最高位の巫女である<語り手>ハーミアが企てている陰謀を明かされる。神の声を聴く筈の<語り手>はその声を聴かず、神はその裏切りに対して怒り、雨を止めたと云う。加えて、アルコン位の後継者には将軍の息のかかった者を据える計画さえ進められているのだ。
老アルコンはミラニィに神をその身に宿す正統な次代のアルコンを探し、正しい選択がなされるようにと云い残す。
思いもよらない大いなる役割を与えられたミラニィだったが、陰謀を知った彼女の身には様々な危機が迫る……。


古代エジプト風の世界を舞台に、神と人との関わりを中心に据えて様々な象徴をふんだんに散りばめた作品……と書くとちょっと敬遠されてしまいそうな気もしますが、手に汗握るエンタテインメント度は高いので読み始めると止まらなくなります。三部作の一巻目なのでややおとなしめな感もありますが、読み手を引っ張っていく力の強い事と云ったら! 続きが気になってどんどん読み進めてしまいました。
登場人物も、野望を持つ将軍と最高位の巫女が結託して企てる陰謀に立ち向かう巫女ミラニィと楽師オブレクに神の化身たる少年アレクソス、切れ者な野心家に見えて意外に実際家(苦労性?)な書記の青年セト、彼らに関わるのは神の影を名乗る人物や何やらいわくのありそうな墓泥棒など、魅力的な人々が揃っています。それぞれの目論見や思惑が複雑に絡み合う為、スリリングな物語の展開をいっそう面白くしているのではないかと。

神の存在が物語の軸となる為、ともすれば手の届かない世界に向かいがちになりそうなのですけれど、心ならずも陰謀の渦中に飛び込んでしまった書記のセトのお蔭で随分と地に足がついた印象になっていました。
彼の的確な現実感覚があるからこそ、オブレクやミラニィやアレクソスの浮世離れした(職業や属性から云えば当然の事とは云え)言動も受け入れ易くなると云いますか。聖と俗のバランスの配分が上手いと思います。

一巻目だからなのかファンタジーとしての深みは思った程ではなかったのですが(写しの王国はもうちょっと堪能したかったな)、続巻ではもっと深遠な世界を見せて貰えると期待しています。
続きを読むのが楽しみ。

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