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2006.01.21

騎士(シヴァルリ)の息子 (ロビン・ホブ)

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『騎士(シヴァルリ)の息子』上
ロビン・ホブ 著、鍛冶靖子 訳、創元推理文庫 刊

<技>と呼ばれる力を持つ遠視者(ファーシーア)一族が治める六公国。
かの国を統べるシュルード王の後継者である第一王子シヴァルリの私生児として生まれたフィッツは、6歳の時に母親から引き離されて城へ連れてこられるが、父親と対面する事も無くシヴァルリの臣だった厩舎頭ブリッチに預けられて厩舎で育つ。やがて彼は王の手足として生きる為に暗殺者としての教育を受ける事になる……。


王家の暗殺者として育てられた人物が少年時代を記した回顧録の体裁を取っています。
継ぎの王として将来を嘱望されていた高潔なシヴァルリ王子の私生児として生まれた為、自身には何の非もないのに周囲からは好奇と蔑みの視線を投げられ、生みの母親の記憶も殆ど無く、王家の血筋を持つにも関わらず自らの名前すら持たずにフィッツ(庶子)と呼ばれ、厩舎で育てられた為に友と呼べるのは犬だけ。
これだけでも相当痛ましいのに、抱えている複数の秘密のせいで心を開けそうな相手にも自分を預けられない八方塞がりな孤独感にはもう読むのがつらくなってしまいましたよ……(特に上巻)。彼が明確な自分の居場所を得るのは王の暗殺者として生きる選択をしてからなのです。生きる為に選べる道がそれだけと云うのも不憫なんですが、与えられるべき愛情の量が不足しているのがなぁ……。いや、フィッツに関わった人々は彼らなりの形で愛情を示してはいますけれど、様々な事情があるのでフィッツの存在を全肯定してくれるだけのものは注げないのですよね。そこがまた痛ましいと云うか。嗚呼。
そんな不幸の星の下に生まれ付いてしまったようなフィッツの行く末が心配でならずに読み進めるのが止められませんでした。筋立てが面白いのも勿論ですが、「頼む! 頼むからこれ以上フィッツを不幸にしないでやってくれ!!」と祈るような気持ちでページをどんどんめくっておりましたよ。でも読めば読むほど不憫な方へ話が進んで行くんだなこれが……(落涙)。
下巻も相当痛々しい展開になってますけれど、救いになっているのはヴェリティがフィッツに寄せる温かな思いやりでしょうか。特に18章で彼がフィッツに掛けたある言葉には胸を打たれましたよ。ふたりの信頼関係はこのままずっと続いて欲しいと切に願っております。並ぶ者の無い筈のヴェリティの立場にも危うさがあってその点でも不安の種は尽きない訳なのですが。
あと特筆すべきはやはり犬たちの存在ですね。もう犬たちが本当に忠実なんですよー。彼らの健気な活躍振りは涙モノでした。著者は相当な犬好きと見ましたがどうなのかなぁ。

物語には数々の謎が散りばめられて、さながらミステリの様でした。
周囲の反感を買ってまで望んだ妃を手に入れたシヴァルリが何故他の女に私生児を生ませたのか、隠遁した地で彼に何が起こったのか、赤い船団の真の目的は何なのか、<技>や<気>の本質とはどのようなものなのか。
謎めいた道化の忠告の真の意味は? 内憂外患の六公国のこれからはどうなるのか。
解けた謎もあれば次巻以降へ持ち越しとなるであろう謎もあり、疑問と興味は付きません。

この巻でひとまずの決着はつけられてはいるものの、謎と陰謀に彩られた物語はこれからどのような方向へ進んでいくのでしょう。
語り手たるフィッツの現在は次の三部作で明らかにされるのでしょうか。最後に出てきた少年の存在も気になりますし、こちらの翻訳も是非是非お願いしたいです!
ともあれ次の『帝王(リーガル)の陰謀』 上も楽しみでたまりません。

リーガルの次なる策謀は? そしてフィッツはどうなる?


蛇足ながら登場人物メモはこちら
話の進行に関係の無い過去の王の名前なども入れてありますが、興味のある方はどうぞ。

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