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2006.03.31

ウースター家の掟 (P・G・ウッドハウス)

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『ウースター家の掟』
P・G・ウッドハウス 著、森村たまき 訳、国書刊行会 刊

「愛する叔母さんのためだとしても、たいした大仕事過ぎるって僕には思えるんだ。僕は断然そんなことは夢にも……」
「ええ、そう、そうね。あんたはやるのよ。なぜってやらなきゃどんな目に遭うかはあんたにはよくわかってるんだから」彼女はここで、意味ありげに言葉をとめた。「ここまではわかったかな、ワトソン君?」
 僕は何も言えなかった。彼女が言わんとするところが何であるかを説明してもらう必要はなかった。ビロードの手を鉄の手袋に包んで──いや、逆だったか──彼女がこんなふうに言うのはこれがはじめてではなかったからだ。

(同書 P45より引用)


国書刊行会版4冊目のジーヴスシリーズは長篇の2冊目です。
前の長篇『よしきた、ジーヴス』(→感想)がちょっと冗長に感じられたので、今回はどうかなぁと思っておりましたが、窃盗と奪還と冤罪のスリルとサスペンスがあって、非常に楽しく読めました。面白かった~。

「おお、汝バートラム・ウースター、受難の泥沼に漕ぎいでし気高き若紳士よ!」
ってなフレーズで始まる自作のポエム(?)を捧げたくなる程度にはワタクシはバーティを応援しておりますが、変に律儀で、とんでもない友人に対してさえも義に篤いバーティの言動は「ウースター家の掟」(※訳者あとがき参照のこと)に則った結果だったのですね。どうしてあんなリスクばかり高くて得るものがナッシング(ハイリスク・ノーリターンって奴だ・笑)な友人関係を続けているのかと常々不思議に思っていたのですけれど、これでようやく謎が解けました。家訓じゃ仕方がございません。所謂‘noblesse oblige’と同じですよね? 位高きは徳高くあるべきって事なのね!(←そうなの?)

さて、今回のバーティの災難は18世紀製アンティークのウシ型クリーマーから幕を開けます。
女傑なダリア叔母さんの夫、トム叔父さんが御執心のこのクリーマーを発端とし、『よしきた』でなんとかまとまった筈の友人ガッシー(オーガスタス・フィンク=ノトル氏)とマデライン・バセット嬢の婚約破談の危機、バセット嬢の従姉妹ステファニー・ビング嬢と旧友ハロルド・ピンカー副牧師との障害多き熱愛(笑)、茶皮の手帖と巡査のヘルメットと「ユーラリー」の秘密、名シェフアナトールの行く末が複雑に絡まりあい、またもやバーティは奔走する羽目に陥ります……と云うか、ダリア叔母さんからもスティッフィー嬢からも必要以上に無理難題を強要される 頼りにされているバーティにはやはり女難の相があるのではないかと(涙)。
今回はジーヴスとバーティは深刻な仲違いをしていないので(笑)、ジーヴスは要所要所でちゃんと名案を出してくれる上、ステッフィー嬢の部屋を家捜しした際には思いもかけない付き合いの良さを発揮しています。戸棚の上のジーヴス……なんてスバラシイ!(笑)
濡れ衣を十二単並みに着せられても雄々しく立ち上がるバーティの姿には思わず喝采を送りたくなりました。ワタクシは彼のこれからについてこう願わずにはいられません。

ああ神よ、彼に艱難辛苦を与えたまえ、ただし妙齢の女性からの難題は控えめに。(←鬼か)

豪傑の誉れ高いダリア叔母さんがバーティに向ける意外な(←失礼)思いやりの深さも今回の読みどころのひとつ。バーティとダリア叔母さんそれぞれの気高い決意と、晩餐メニューについての話し合いのあたりではちょいとホロリときましたよ。ダリア叔母さんってば、なんだかんだ云ってても(「ブサイクちゃん」、「若いろくでなし」等)バーティの事を好いていてくれているのねぇ……。
ウースター一族の結束の固さに涙しつつ本を閉じることができました。
感動を有難う、ダリア叔母さん!(あれれ?)

本筋とは関係ありませんが、『エムズワース卿の受難録』(→感想)に出てきたフレディに関しての言及があったのが嬉しかったー。

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