サンキュー、ジーヴス (P・G・ウッドハウス)
『サンキュー、ジーヴス』
P・G・ウッドハウス 著 森村たまき 訳 国書刊行会 刊
「うむ、わかった」僕は言った。「来るんだ、ジーヴス。案内してもらう用意はできた」
「かしこまりました。ひとつ愚見を申し上げることをお許しいただけますでしょうか?」
「ああ、ジーヴス」
「これはあなた様がこれまでなさった如何なる行為よりも、はるかに貴いなされようでございます」
「ありがとう、ジーヴス」
前にも言ったとおり、こういうことをジーヴスほどうまく言い表せる奴はいない。
(同書 P342より引用)
国書刊行会版ジーヴス6冊目。
バンジョレレ(バンジョーとウクレレが合わさったような楽器だそうな)を入手し、ウキウキ気分で練習に励むバーティ。ところが御近所からは大苦情が寄せられ、ジーヴスからは三行半を突きつけられ 辞職を申し渡される始末。それでも愛しのバンジョレレ(笑)と離れられないバーティはロンドンを出て、田舎に住む友人チャッフィー(第五代マーマデューク・チャフネル男爵)のコテージを借り受けて楽器の鍛錬に励もうとするものの、例によって例の如くドタバタに巻き込まれて……ってな話ですよ(どんなまとめ方か)。
チャッフィーとポーリーン、サー・ロデリック・グロソップとチャッフィーの伯母第四代チャフネル男爵未亡人のレディー・マートル・チャフネルの二組のカップルの恋模様に、チャッフィーの所有するチャフネル・ホールの売却問題、やんちゃなお坊ちゃま方(※婉曲表現)ドゥワイトとシーベリーの諍い、ちょっとイっちゃってる後釜執事ブリンクレイのかなり危ない行動、巡査たちとバーティの熱きバトル(つっくづく警察官とは相性最悪だよなバーティ。笑)、拉致監禁と黒人ミンストレル、などなど数々の波瀾万丈を経て、バーティとジーヴスは果たして元の関係に戻れるのか?とハラハラドキドキを楽しみましたよー。
訳者あとがきにもありましたが、今回はメロドラマティックな展開でしたね。読みながら「んもう、バーティってば本当に素直じゃないんだから! バンジョレレなんてさっさと処分しちゃってジーヴスに謝って戻って来て貰いなさいよ! じれったいなぁもう!!」とかぶつぶつ云いながら展開を追いかけてしまうところなんか本当に昼メロを観ているような気分になりましたよ……(アホですか)。
そして昼メロ要素をよりいっそう際立たせているのが(どっちかと云うとこっちの方がメインか)、 貧乏英国貴族のチャッフィーとアメリカ人大富豪の娘ポーリーンのロマンスですね。非常にベタですが、アホが絡むと話がややこしくなって非常に愉快です。
それにしても今回のヒロイン(?)ポーリーン嬢は策略の一環とは云え、バーティにがっつり抱きしめられてキスされたり、バーティのベッドではなんとパジャマ姿を披露したりと、なかなかに色っぽい展開に身を置いております。しかも元婚約者だなんて読者としてもちょっと心穏やかではいられません。
おまけにポーリーン嬢、「あなたには、何ていうか、頭のくるくるしたアヒルちゃんみたいな可愛らしさがあるのよ。もしあたしがマーマデュークに夢中でなかったら、あたしあなたといくらだって結婚できてよ、バーティ」(P106)なんて台詞まで口にしますし。まずい! これはバーティの独身生活の最大の危機か? もしかして万が一いや億に一彼女とくっついちゃったらどうしよう……と微妙な危機感を抱く羽目になりました(笑)。
忘れてはならない今回最大の感動ポイントと云えば、天敵だったサー・ロデリックがバーティとある種の共感関係に到る場面でしょうか。全く相容れない仲だったふたりの間に芽生えた奇妙な友情(?)の詳細については本文を参照して戴きたいのですが、決して理解し合えないだろうと思われていた者同士でも苦境に立たされることによって互いを思いやることができるようになるんですね。和解と平和と友情って素晴らしい! 本当に素晴らしいですよね!(半笑い)
クライマックスでは「ウースター家の掟」の精神に則って泥をかぶる 高貴なる振る舞いを見せてくれました。やっぱりバーティはこうでなくては(酷)。
そんなこんなで今回も楽しませてもらいましたが、国書刊行会版ジーヴスも次回配本でいよいよおしまいなのですね。まだ訳されていない長篇があるのでかなり残念ですー。
全7冊って半端だから(そうか?)、キリの良いところで10冊とかにならないかな~と思ってみたりして。続刊刊行を激しく希望です。



Comments