剣嵐の大地3 氷と炎の歌3 (ジョージ・R・R・マーティン)
『剣嵐の大地 3 氷と炎の歌3 』
ジョージ・R・R・マーティン 著 岡部宏之 訳 早川書房 刊
スターク勢を中心とする双子城訪問は血に満ちた惨劇に終り、キングズランディングでは権勢の頂点に達したラニスター家とティレル家を結ぶジョフリー王の結婚の宴が華々しく執り行われようとしていた。
一方、“壁”をはさんで野生人との絶望的な戦いの中に身を置くジョン・スノウは陥落寸前の黒の城(キャスル・ブラック)で予想もしなかった人物と出会う……。
※前巻までの内容に触れている箇所がありますので、未読の方は御注意下さい。
『剣嵐の大地』最終巻。
読者である自分も何を(誰を)信じてよいのかわからなくなってしまうほど、視点人物たちのそれぞれが様々な裏切りに見舞われる巻でした。
前巻で自分の中の驚愕メーターが振り切れてしまったので、もう何があっても驚くことはないだろうと思っていましたが甘かったです。まさかこんなことになるとは!
ホワイトベアドの過去、デーナリスが直面する勝利と敗北と裏切り、サムウェルとある人物の出会い、ジョン・スノウをはじめとする夜警団(ナイツ・ウォッチ)の苦闘、サー・ダヴォスの機略、ジョン・スノウが北の地で対面することになった人物とそのやりとり、リトルフィンガーことピーター・ベーリッシュ公の用意周到な執念深さ、そして最後の最後ではまた驚くべき展開が待っております。これからお読みになる方はゆめゆめ油断なさいませぬように(老婆心と云うよりはいらぬ世話と云うべきか)。
ラニスター家のことは半ば予想のうちだったのですが、心ならずも渦中の人となってしまったティリオンの置かれた状況の悲惨さは読んでいて耐え難いものがありました。生まれついての外見のせいで周囲から情容赦のない扱いをされているティリオンは、今までも辛酸を舐めざるを得ない立場に据えられていましたが、今回の悲惨そのものと云った状況によって彼の内面も大きな変化を遂げることになります。彼の行く末は一体どうなるのか。
全3巻を通じて一番印象的だったのはやはりジェイム・ラニスターです。1・2巻では、権勢を誇るラニスター家の長男で美にも力にも恵まれた強者の側の立場にあったジェイムは、戦う為に必要だったものを失ったことによって弱者の立場へと追い落とされますが、強者から弱者の立場になってからの彼の精神面での変化は目を見張るものがありました。ジェイムが失ったものと引き換えに得たものが何であるかは本文を読んで戴ければ明白ですが、このような人物になるとは『七王国の玉座』の時点では思ってもみませんでした。
海の向こうである意味では最強の軍団を手に入れたデーナリスは、勝利と共に苦い敗北と手酷い裏切りを味わいます。そこから彼女がどのように「女王」となって行くのかという過程もこれから語られることとなるのでしょう。ウェスタロス上陸の暁に彼女は偉大な女王となっているのか、それとも志半ばにして斃れることとなるのか……。
今回のジョン・スノウは運命の変転に翻弄されておりましたが、相も変らず困難の上に困難が山積みになったような状況なものの、「ロード・スノウ」としての自分を確立していくのでしょうね。新しく関わりを持つことになった人々との力関係はどのように変化していくのでしょうか。
被虐的な美しさを増していくサンサに、少女に与えられたとは思えないほど苛酷な運命に逞しく立ち向かうアリア、超自然的な要素が増えていきそうなブランたちの旅の行方など、スターク姉弟のこれからも非常に気になります。
登場人物たちはまるで輪舞のように様々な人々と関わりを持ちます。すれ違っていた人物たちが出会い、そこから新しい関係が始まり、別れがまた新しい出会いをもたらします。表舞台から消えた人々の消息はおそらくこれから語られる新しい物語の呼び水となるのでしょう。物語はますます多面的で複雑な目の離せないものとなって行きそうです。
王権をめぐる争いはまたしても大きな転換期を迎えました。
視点人物の入れ替わりもありそうですし、次巻での展開は一体どうなってしまうのかと思うといてもたってもいられない気分です。最新作を読んだばかりなのにもう続きが読みたくてたまらなくなってしまうあたり、著者に踊らされております(笑)。
ともあれ、『剣嵐の大地』全3巻堪能させて戴きました。
原書の4巻目は刊行済みだそうなので、一日でも早く邦訳が刊行されることを願っています。
実は、作中の“壁”よりも高くて厚い語学力と云う名の壁が立ち塞がっているのを承知で、原書4巻を買ってしまおうかと思ってしまうほど続きが読みたいんですよね……。
<既刊感想>



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