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2007.03.19

きつねのはなし (森見登美彦)

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『きつねのはなし』
森見登美彦 著 新潮社 刊


京都にある芳蓮堂という古道具屋が話の中心になったり遠景になったりする4つの物語が収められています。
収録作は以下の4篇。

「きつねのはなし 」
「果実の中の竜 」
「魔 」
「水神」


古道具屋を狂言回しに骨董にまつわる不思議な出来事を綴っていく話なのかなと想像していましたが、見事に外れました。芳蓮堂と云う古道具屋が主な舞台となるのは表題作の「きつねのはなし」のみで、残りは名前が出てくるだけだったり、関係者が出てくるだけだったり。4作品のそれぞれの時代も明記されていないので、全部が同じ時代の話ではないようにも感じられます。
収録作の殆どが怪異譚であり、京都という土地を舞台にしているせいか、夜の闇の色が深いような印象を受けました(関東者の勝手な思い込みかもしれませんが……)。
夜の小道を迷いながら歩いていて、視界の端にふと何かがよぎるんですが、振り返っても何もいない。自分の気のせいなのかもしれないけれど、何かがそこに息づいているようで気味が悪くなって思わず小走りになってしまった時のような、得体が知れないものへの怖さが漂っていたと思います。
古道具屋の芳蓮堂にしても、作中に出てくる「ケモノ」にしてもその本質は明かされません。
表題作の「きつねのはなし」の女主人と最後に収録されている「水神」に出てくる女性は同一人物なのかそれとも別人なのか(特に根拠はありませんが、「水神」の「芳蓮堂さん」は「きつねのはなし」のナツメさんの母親だろうかと云う気もします)、「ケモノ」の正体は何なのか。その辺りが明確にされないことによって、薄気味悪さが後を引くようにも感じられ、ちょっと古風な雰囲気を残す怪談話として余韻があって良かったです。怪異の背景を全て明かさずに、読者の想像の余地を残しておく方が怖さが引き立つように思えるので、個人的にはこういった手法の怪談には心惹かれるのですが、うやむやなのが厭だったり謎を明らかにして欲しいと感じる向きには消化不良感があるかもしれません。
きっちりと怖かったのは「きつねのはなし」、薄気味悪かったのは「魔」、先輩の語る「体験談」が何とも云えない余韻を残して印象的だった「果実の中の龍」、祖父の通夜の席で起きる奇妙な出来事と曽祖父・祖父・伯父たち・父・語り手の僕、一族の記憶と水が深い関わりを持つ「水神」。
どの作品も少し古めかしいような(※褒め言葉)端正で静かな語り口で闇の色を引き立ていました(何となく内田百閒が書く怪異譚と同じような色彩をもっているような気が)。
かなり好みの雰囲気だったので、またこういった作品を書いて欲しいなぁと思います。


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Comments

こんにちは。
私も読みました。

一番怖かったのは「魔」でした。
「果実の中の龍」の余韻も良かったですね。
この雰囲気で長編を読んでみたいです。

Posted by: chiro | 2007.08.20 at 05:25 PM

この時期に読むとまた違った怖さが味わえるような気がして、春に読んだのがちょっと勿体無かったような気もしています(笑)。
怪異譚な長篇も読んでみたいですね!
森見氏は色々な引き出しを持っていそうなので、他の著作も読みたいと思っています。でも人気があって図書館ではなかなか借りられない……。


Posted by: 羽鳥 | 2007.08.22 at 12:18 AM

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Tracked on 2007.03.31 at 12:00 AM

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