神を見た犬 (ディーノ・ブッツァーティ)
『神を見た犬』
ディーノ・ブッツァーティ 著 関口英子 訳 光文社古典新訳文庫 刊
「カフカの再来」と云われたイタリアの作家の短篇集です。
収録作品は以下の通り。
「天地創造」
「コロンブレ」
「アインシュタインとの約束」
「戦の歌」
「七階」
「聖人たち」
「グランドホテルの廊下」
「神を見た犬 」
「風船 」
「護送大隊襲撃」
「呪われた背広」
「一九八〇年の教訓 」
「秘密兵器 」
「小さな暴君」
「天国からの脱落」
「わずらわしい男」
「病院というところ」
「驕らぬ心」
「クリスマスの物語」
「マジシャン」
「戦艦《死》」
「この世の終わり」
不条理なところは確かにカフカっぽくもありますが、カルヴィーノの作風にも似ているような気がします。イタリアと云うお国柄から軽妙なユーモアとアイロニーを含む雰囲気の作品が生まれるのかな?とも思うのですけれど、イタリア文学に詳しくないので見当違いかもしれません(汗)。
翻訳が読みやすくて初めての作家の割には気負わずすいすいと読めてしまいました。
不条理系の作品や風刺の効いたユーモアのある作品や人に対する温かみを感じさせる作品など、ヴァラエティに富んだ作風の作家だったようですね。
登場する神様や聖人様が人間臭くて親しみやすいのが楽しく、読んでいてほのぼのしてしまいました。
「天地創造」のうとましくもしぶとい天使と彼の提案に誘惑を感じてしまう神。
「聖人たち」に出てくる新米聖人で自分の存在意義について悩む聖ガンチッロ。
「風船」で下界の幸福と悲しみを眺める聖オネートと聖セグレタリオ。
「天国からの脱落」で、新しい道を踏み出す聖エルモジュネ。
「わずらわしい男」にわずらわされる聖ジェロラモ。
天国にいるのがこんな存在ばかりであるならば、彼らに会いに天国へ行ってみたいという気持ちになってしまいます(行けるかどうかはまた別の話として・笑)。
キリスト教絡みの人情話である「驕らぬ心」と「クリスマスの物語」も泣かせのテクニックが巧みな作品でした。
表題作の「神を見た犬」で描かれる象徴性、「戦の歌」 や「戦艦《死》」 の根底にある破滅と隣り合わせの不条理感、追われる緊張感と最後に齎される幻想性が心憎い「コロンブレ」。非常に怖かったのは「七階」という作品。 淡白に丁寧に順を追っていく様子に厭な気持ちが呼び起こされるので間違っても入院中には絶対に読みたくないです……。
文庫一冊の中に収められているのが不思議なほどの一篇一篇の豊富な着想には感心してしまいます。
短いながらも鮮やかな印象を残す話を読んでみたい方にはお薦め。



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