天と地の守り人 第ニ部 (上橋菜穂子)
『天と地の守り人 第二部 カンバル王国編』
上橋 菜穂子 著 偕成社 刊
日が、雲間から顔をだし、すぐにまた、かくれていく。チャグムのこわばった横顔をみながら、バルサは、しずかな声でいった。
「みごとなホイ(捨て荷)だったね。」
チャグムは一瞬、いぶかしげな顔でバルサをみたが、すぐに、なにをいわれたのか、理解した色が、目にあらわれた。
けわしくこわばっていたチャグムの顔に、ゆっくりと苦笑が浮かぶのを、バルサは、ほほえんでみつめていた。
(同書 P283~284より引用)
完結篇2冊目の舞台はカンバル王国へ。
序章のティティ・ラン<オコジョを駆る狩人>たちの登場シーンを読んで、無性に『闇の守り人』を読み返したくなってしまいました。
もともとシリーズの中で不思議の色彩が一番濃いと思っている『闇の守り人』が大好きなのもありますけれど、この巻で懐かしい人(以外のものたちもですね)や場所に対して言及があったものですから。カッサも立派になりましたね。
そんな感慨はさておき、ナユグ(ノユーク)が迎えた「春」がサグに与える変化とその影響、タルシュ帝国の侵攻が進む中でのロタ・カンバル・新ヨゴの情勢の緊迫感、それぞれの国の内部の思惑や苦渋の選択、バルサとチャグムが辿る苦難の道などなど、読み応えがたっぷりでした。当然と云えば当然なのですが、 読んでいるこちらがハラハラしてしまうほど御都合主義が皆無なのも凄かったです。流石!
登場人物たちの中にある「故郷」のかたちの描き方も印象深いものがありました。
一章に出てくるホイ(捨て荷)のエピソードの利かせ方は物凄く良かったのですが、読んでいて胸がいっぱいになったのは「アラム・ライ・ラ」の方でした。これに関わる最初のシーンと最後のシーンの対応のさせ方が心憎くて!
ラストシーンでは最終巻を前にして色々こみ上げてきてしまいました。
あと残り1冊なので激しく名残り惜しいのですが、この引きでは続けて読まずにはいられませんよもう。
本篇とは直接関係ありませんが、タルシュ皇帝と<太陽宰相>アイオルの若き日の物語は読んでみたいと思いました。タルシュを強大な帝国に築きあげたこのふたりが分かち合ってきた四十年間のことを知りたいです。
外伝として一冊にまとめて下さらないかしら。



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