マジック・フォー・ビギナーズ (ケリー・リンク)
『マジック・フォー・ビギナーズ 』
ケリー・リンク 著 柴田元幸 訳 早川書房 刊
『スペシャリストの帽子』(→感想)のケリー・リンクの久し振りの邦訳短篇集です。
収録作品は以下の通り。
「妖精のハンドバッグ」
「ザ・ホルトラク」
「大砲」
「石の動物」
「猫の皮」
「いくつかのゾンビ不測事態対応策」
「大いなる離婚」
「マジック・フォー・ビギナーズ」
「しばしの沈黙 」
『スペシャリストの帽子』よりも不条理度数が上がっているように思えました。読者を煙に巻くような書き振りは相変わらずと云ったところでしょうか。
物語の出発点は読者の住む世界の現実と地続きなように見えるので始めはすんなりと入れますけれど、読み進めていくうちに気がついたら思ってもみなかった方向へ誘い込まれてしまうような作品ばかりです。
祖母の残した家宝のハンドバッグの中にはひとつの国が丸ごとと大量の図書館本が入れられていたり、異世界のすぐ傍にあるコンビニにはゾンビが来店したり、何かに取り憑かれた家で日々が次第に家族それぞれの生活を乱していったり、生者と死者の間で婚姻が結べる世界では離婚の話し合いが霊媒を通じて行われていたり。
設定は奇妙なのですが、登場人物たちの持つ心情は読者にも理解できるようなものが多いので、共感と疎外感とを味わいながら作品世界を漂って行けるような気がします。
収録作では民話や童話の香りを残したような「妖精のハンドバッグ」と「猫の皮」、現実と空想世界の境界が互いに逸脱しあって曖昧になっていく「マジック・フォー・ビギナーズ」、「しばしの沈黙」あたりが好きです。
明確なオチがない作品が多いので不条理なものが苦手な方にはお薦めしにくい本かもしれませんが、わからないことを無理に理解しようとせずに作品世界の奇妙さや不気味さをそのまま受け入れられれば楽しめるのではないかと思います。



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