悪魔の薔薇 (タニス・リー)
『悪魔の薔薇』
タニス・リー著 中村融 編 安野玲・市田泉 訳 河出書房新社 刊
日本オリジナルのタニス・リー短篇集。
収録作は以下の通り。
「別離 」
「悪魔の薔薇」
「彼女は三(死の女神)」
「美女は野獣 」
「魔女のふたりの恋人 」
「黄金変成 」
「愚者、悪者、やさしい賢者」
「蜃気楼と女呪者(マジア)」
「青い壺の幽霊」
幻想・妖美・官能ってなリーの作品の特質がすべて収まっています。
中村融さんのセレクトが絶妙なんですね。どれも短いのに非常に密度が濃くて満足度が高いです。
物語の色彩に合わせた語りの鮮やかさも堪能しました。
翻訳もそれぞれの物語に相応しい言葉の選び方が素晴らしく、雰囲気を高めてくれるものでした。
ヴァンパイアの女主人に仕え続けた従者の物語「別離」、三つの姿を持つ女神に魅入られた画家と作曲家と詩人。三人の芸術家と女神の交感を描いた「彼女は三(死の女神)」、魔女とふたりの騎士のままならぬ恋の行方を切なくも美しい筆致で綴る「魔女のふたりの恋人」、古代ローマと錬金術と東方の神を絡めた「黄金変成」、仮面のモティーフの使い方が秀逸な中華風幻想譚「蜃気楼と女呪者(マジア)」、魔道王が得た青い壺がもたらす神秘を描く「青い壺の幽霊」あたりが好きです。
特に「黄金変成」は歴史ものの味わいと幻想美とオリエンタリズムが同時に味わえる佳品だと思います。
黄金と東方の魔女が持つ謎めいた輝きに眩惑されてしまいました。凄く好き。
「悪魔の薔薇」は東欧を舞台にした官能的なホラー……なのかな?
途中までの雰囲気は凄く好きだったんですけど、オチの部分がちょっと好みではなかったです……。
いや、確かにあのオチは怖いし厭だとは思いますが。
「美女は野獣」は都に悪影響を及ぼしていると云われる暴君とその暗殺者の物語。表裏一体とも云える彼らの関係に深みがありました。
「愚者、悪者、やさしい賢者」はアラビアンナイト風の物語。リーの作品ではこう云った雰囲気の作品は珍しいのだとか。
軽やかさを感じさせながらも、最初と最後に出てくる<死>の存在で重みを添えています。
リーならではの妖艶なエキゾティズムを久々に堪能しました。
またこういった雰囲気の作品集が編まれると良いなぁ。







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