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2007.09.19

新アラビア夜話 (ロバート・ルイス・スティーヴンスン)

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『新アラビア夜話』
ロバート・ルイス・スティーヴンスン 著 南條竹則・坂本あおい 訳  光文社古典新訳文庫 刊


「殿下、御無理をなさらないでください」ジェラルディーン大佐が言った。
「ジェラルディーン」と王子はこたえた。「わたしが借りを返さなかったことがあるかね? わたしはおまえにこの男の命を借りている。だから、それを返そう」

(同書 P137より引用)

三月のある晩、ボヘミアのフロリゼル王子とその股肱の臣ジェラルディーン大佐はロンドンのレスター広場の牡蠣料理屋(オイスターバー)で、クリームタルトを盛った大皿を持つ供の者ふたりを従えた若者と出会う。店の客にクリームタルトを配り続ける青年に興味を持ったフロリゼル王子は、若者から奇妙な振る舞いの理由をを聞き出し、自殺志望の人々が集う「自殺クラブ」の存在を知る。彼の導きでクラブを訪れた王子は、そこで起こる死のゲームの渦中の人となるが……。

19世紀末のロンドンとパリを舞台に、ボヘミアのフロリゼル王子がお忍びで様々な事件に関わる話です。
「自殺クラブ」と「ラージャのダイヤモンド」の2篇が収録されています。
『宝島』の著者が書いた19世紀ロンドン版「アラビアンナイト」ってことなのですが、アラビアは特に関係ありません。
訳者である南條竹則さんの解説によると、 「英国の首都をアラビアの都バグダッドに見立て、お忍びで夜の冒険を求めるフロリゼル王子とジェラルディーン大佐を教主(カリフ)ハルン・アル・ラシッドと腹心の大宰相になぞらえる趣向」なんだそうです。

物語の中心になるのはフロリゼル王子ですが、視点人物は事件ごとに変わっていくので、7つの短篇を収めた物語集と云えなくもないかな(「自殺クラブ」の方は「クリームタルトを持った若者の話」、「医者とサラトガトランクの話」、「二輪馬車の冒険」の三篇で構成されてまして、「ラージャのダイヤモンド」の方は「丸箱の話」、「若い聖職者の話」、「緑の日除けがある家の話」、「フロリゼル王子と刑事の話」の四篇から成っています)。


フロリゼル王子が19世紀のボヘミアの王子ってことは、ボヘミアって概ねチェコのことだと考えるとあの時代のチェコはハプスブルク家の勢力圏だから、フロリゼル王子イコール ルドルフ皇太子ってことか? などといらぬ推測をしましたが(考え過ぎ)、解説によれば、どうも殿下のモデルは後のエドワード7世なようです。小説中に英国皇太子を登場させるのがはばかられるので、ボヘミアの王子となったらしい。
だもんで、作中のボヘミアは実在の国との関連は無くて、『ゼンダ城の虜』におけるルリタニアのような欧州の架空の国ってことなのね。
因みに「ボヘミアの王子」という肩書きと「フロリゼル」という名前はシェイクスピアの『冬物語』から取られたそうです(これも解説にありました)。
ああ、どこかで聞いたことがあるような名前だと思ったらシェイクスピアだったのか!(気づくのが遅い)。


個人的にはフロリゼル殿下と腹心のジェラルディーン大佐(※殿下より五、六歳年下の美青年。有能)のコンビが好きだったので「自殺クラブ」の方が面白かったです。でも、2話目と3話目の大佐は気の毒過ぎる……(涙)。
あと、「ラージャのダイヤモンド」のラストは非常に不満ですワタクシ。
そりゃあ、王子の身分なのに国での仕事をほったらかして(?)よその国での冒険に明け暮れているようではああなっても仕方ないかもしれないけど、物語的には設定がかなりゆるめなんだからそういう部分できっちりしたオチはつけなくてもいいですから!
殿下には大佐と(※私的な願望・笑)いつまでもお忍び冒険を続けていて欲しかったですよー。


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Tracked on 2007.10.02 at 07:31 PM

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