掠奪都市の黄金 (フィリップ・リーヴ)
『掠奪都市の黄金』
フィリップ・リーヴ 著 安野玲 訳 創元推理文庫 刊
壊滅したロンドンを後にして飛行船で暮らすトムとヘスターは、冒険家であり高名な作家であり歴史家でもあるペニーロイヤルをブライトンへと送り届ける途中、戦闘飛行船に襲撃される。
なんとか移動都市アンカレジに拾われたものの、アンカレジを統べる十六歳の女辺境伯フレイアとトムは互いに惹かれ合っていき、ふたりの急接近に心穏やかでいられなくなったヘスターはある思惑を胸に秘め、トムをアンカレジに残して飛行船で飛び立ってしまうのだが……。
都市が移動しながら喰ったり喰われたりする、都市淘汰主義の原則に基づいた弱肉強食の世界を舞台とする『移動都市』の続篇。
物語はこの2年後から始まります。
映像的でテンポの良い描写と読み始めたら止まらないスピーディな展開は2作目でも健在ですね。面白かったです。
久し振りにトムとヘスターに再会できた喜びも束の間、トムに対しては色々と立腹していたのですが(笑)、「この話のヒロインはヘスターでもフレイアでもなくトムなんだ!」と思い至ったらばなんか色々腑に落ちました。
だからあんまり役に立たなくてもいいやだってヒロインだし!
それに比べてもうヘスターのオトコマエなことと云ったらば。
出自を知って腹を括ったあとのダーク・ヒーローっぷりが恰好良過ぎです。
フレイアも始めは単なるワガママお嬢ちゃんかと思ってましたら、アンカレジの長としての自覚が出来てからの成長振りが良かった!
登場したときから胡散臭いオーラをまき散らしていたペニーロイヤル教授は最後の最後まではずさない大活躍ですね。転んでもただでは起きないどころかある意味濡れ手で粟って感じ(ちょっと違うか)。なんか登場人物の中で一番長生きしそうな気がしますよ(笑)。
このシリーズは前作のアナといい今回のヘスターやフレイアやサスヤといい、女性の方が恰好良さが多めな気がします。
男性キャラクターの方はなんかちょっとこうトホホな部分が情けなくも愛嬌がある感じですね。
キャラクターの魅力は勿論ですが、掠奪都市アルハンゲリスクに追われながら新天地を求めるアンカレジの遍歴が冒険的な航海のようで、アンカレジの面々は無事に新天地へ辿り着けるのかという興味も物語の牽引力になっていたと思います。
特に第二部の終わりから第三部にかけては手に汗握る展開の連続で、著者のストーリーテリングの巧みさが如実に現れていました。
次巻は本作の十六年後の話になるのだそうです。
新キャラも出てきてますます賑やかになりそうですね。最後の方で触れられていた人物も出てくるのかな?
反移動都市同盟の方にも新しい動きが出てきましたし(<グリーンストーム>の動向が激しく気になります)、移動都市を取り巻く環境はどのように変化していくのでしょうか。<ロストボーイ>たちのその後も知りたいですし。
続きが非常に楽しみです。
- フィリップ・リーヴ、安野 玲
- 東京創元社
- 1134円
書評/SF&ファンタジー



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