魔使いの秘密 (ジョセフ・ディレイニー)
『魔使いの秘密』
ジョゼフ・ディレイニー 著 金原瑞人 田中亜希子 訳 創元ブックランド 刊
魔使いジョン・グレゴリーとその弟子トム、そして魔女の血を引く少女アリスのチペンデンでの奇妙で心地よい同居生活も束の間、ある晩訪ねてきた男の手紙を読んだ魔使いは悪い噂に事欠かないアングルザーク高原へ移ると宣言し、旅の途中でアリスを別の家に預けると云う。
アングルザークで魔使いとトムを待っていたのは、冬の家に封じられているグレゴリーの元恋人ラミア魔女のメグと、修業に失敗したことで魔使いに深い恨みを持つ元弟子のモーガンだった。
冬の魔王の異名を持つ古代の神ゴルゴスを目覚めさせようとしているモーガンの野望を魔使いとトムは止めることができるのか──?
タイトル通りに魔使いの秘密が明かされるシリーズ3冊目。
1・2巻の簡単な感想はこちら。
前作でもちらほらと言及されていた師匠の過去が語られます。
これまで仕事に対しても他人に対しても自分に対しても厳しい態度を崩さなかったジョン・グレゴリーの意外な一面が窺えました。四角四面にストイックな人なのかと思っていましたが、彼にも執着や未練のように人間としての弱い部分があり、それを断ち切れないことで苦悩する部分があって何とも切なかったです。
不謹慎ではありますけれど、そんな彼の姿にはちょっと色気を感じたので若き日のグレゴリー師の物語も読んでみたくなりました。過去に何があったかと云うのは本作できちんとわかるんですけども、視点がトムなので何かこういまひとつ喰い足りなくて。児童書ですから仕方ないと云えばそうなんですけどね。
でも激情に翻弄される若き日の師匠の姿は見てみたいなぁ。特にメグとの出会いとかエミリー・バーンズとのエピソードなどは師匠視点で読みたいです。
作中で言及される師匠への疑惑に関しては否定する気持ちが7割で肯定してしてしまいそうになる気持ちが3割程といったところでした。全否定できないような気にさせるところが何ともなぁ……(笑)。
しかし、師匠ってば前回では重い病気になって今回は大怪我とは大変ですね。あまり無理の利かない体なんですからどうぞお体大事にして下さいと云いたいです……。
トムの方はと云えば、とうとう避けられないつらい別れを経験することなります。
そして、精神的なよりどころとも云える母親の助けをこれまでのようには期待できないことになった上に、トムを取り巻く状況はこれまで以上に苛酷で困難なものになりそうです。
善悪の狭間を行ったり来たりしているアリスの立ち居地は未だにはっきりしないのですが、トムとの関係は師匠とメグのようになってしまうのか、それともまた違った新しい形の関係として成り立つのかが楽しみでもあり怖くもあるところですね。登場人物それぞれの行く末がとても気になります。
続きも是非読みたいです。
- ジョゼフ・ディレイニー
- 東京創元社
- 2625円
書評/SF&ファンタジー




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