エッグ氏、ビーン氏、クランペット氏 (P・G・ウッドハウス)
『エッグ氏、ビーン氏、クランペット氏』
P・G・ウッドハウス 著 森村 たまき 訳 国書刊行会 刊
ウッドハウス・スペシャルの2冊目は短篇集です。
収録作品は以下の通り。
「ユークリッジとママママ伯父さん」
「バターカップ・デー」
「メイベルの小さな幸運 」
「ユークリッジのホーム・フロム・ホーム 」
「ドロイトゲート鉱泉のロマンス」
「アンセルム、チャンスをつかむ」
「すべてビンゴはこともなし 」
「ビンゴとペケ犬危機 」
「編集長の後悔」
「サニーボーイ 」
「元気ハツラツ、ブラムレイ・オン・シー」
「タズレイの災難 」
ユークリッジものとビンゴものとマリナー氏ものとフレディー・ウィジョンものにノンシリーズものが1篇。
合計12篇が収録されています。
「ユークリッジとママママ伯父さん」
「バターカップ・デー」
「メイベルの小さな幸運 」
「ユークリッジのホーム・フロム・ホーム 」
の4篇がユークリッジもの。
かなりオレ様な性格のスタンリー・ファーンショー・ユークリッジ(フルネームの綴りはStanley Featherstonehaugh Ukridge なんだそうです。ファーンショーの部分は絶対読めない……。そのまま見てフェザーストーンハフとか読んじゃうよ!)が物語の語り手でもあり友人で作家のコーキー(ジェームズ・コーコラン)に日々たかりつつ、人を酷い目に合わせたり人に酷い目に合わされたり、後見人のジュリア叔母さんの目を盗んでろくでもないことをやらかしたりしています。
バーティもいい奴ですけど、コーキーも本当にいい奴ですねぇ。友情ってスバラシイな!と考えさせられました(笑)。
コーキーの立場になってみればはた迷惑なことこの上ないですが。そして自分は絶対コーキーの立場にはなりたくありませんが(おい)。
「アンセルム、チャンスをつかむ」 はマリナー氏もの。
マリナー氏の甥、副牧師のアンセルムが愛するマートル・ジェラビー嬢に振り回されながら名付け親から受け継いだ遺産の切手アルバムをいかに処分して彼女と結婚したかの顛末が語られています。
運不運の上昇下降のテンポが良くて面白かったです。
切手蒐集家に限らず、マニア心理って因果だよねぇ……(身に覚えアリアリ・笑)。
ノンシリーズの「ドロイトゲート鉱泉のロマンス」が個人的には一番のお気に入り。
ポンムルームの場面ではバースを思い浮かべながら読んでました。
訳者あとがきによれば、ドロイトゲートはウースターシャーのドロイトウィッチ(バーミンガムの南西にある街)とヨークシャーのハロゲートを合わせた架空の街だそうで、概ねハロゲートをモデルにしている模様。でも作中に「イングランド西部にあるかの有名なる保養地」(P128)ってあるからバースでもイメージとしては間違っていないと思うんですがどうか(そんなことどうでもいいですよ)。
主人公フレディー・フィッチ=フィッチは、ドロゲートの病気セレブ(笑)たちにつまはじきにされて御機嫌斜めきわまりない療養中の伯父サー・エイルマーから信託財産の引渡し許可を得て愛するアナベルと結婚することができるのか?ってのが大筋です。アナベルの元婚約者モティマーやらジョー叔父さんやらが出てきてからのてんやわんやっぷりが楽しくって!
収録作中で一番スラップスティック度が高いのではないかな。モティマーこと「偉大なるボローニ」の奇術を含めて映像で観てみたくなりました。
しかし、ランベローを筆頭にしたドロイトゲートの病気上流階級に属する人々の傍若無人ってばさぁ!
(中略)病人の間くらい、階級意識の過剰な共同体もありはしない。古代スパルタ人は彼らの奴隷にまったく友好的ではなかったというし、革命前のフランス貴族は自分のところの小作人にいくらかつんけんしたかもしれない。だが──たとえば糖尿病治療のためにスイスでインシュリン注射を投与されてきた人物が、足の巻き爪で村医者に治療を受けているだけに過ぎない人物に対してとる態度と比べれば、そんなのはほとんど親しみを込めて背中をポンポン叩くのに等しい。
(P129)
のだそうで、間違った選民意識丸出し(笑)なんですよね。
こんな人たちの中でストレスを溜め込んでたら病気が治りにくいんではないのだろうか、イラっとし過ぎて血圧上がるんではなかろうかと心配しちゃいます~。
「すべてビンゴはこともなし 」
「ビンゴとペケ犬危機 」
「編集長の後悔」
「サニーボーイ 」
の4篇はビンゴのシリーズ。
バーティの友人として親しみを持っていたビンゴですが、作家のロージーとめでたく結婚して男の子にも恵まれているので、アホはもう卒業なのかしら……とちょっぴり寂しく感じていたものの、でもそれがビンゴの幸せなんだから祝福しなくっちゃだわ!と思おうとしていたのに、
結婚しようが父になろうがアホはアホのままなんですね(笑)。
そんなビンゴが大好きだ!
特にほぼ連戦常敗なのにも関わらず、賭け事(主に競馬ですが、カジノにも行くし、息子のアルジャーノン・オーブリー君まで賭けの対象にしてますよビンゴってば……)に対するドリームを捨てられないところが全くもって激しくアホでスバラシイです。まさに昔のことわざにある通り、「スズメ百までアホを忘れず」って感じですよネ!(そんな諺はありません)
ロージーとウーフィー・プロッサー(※友人で金づる 資金提供者)に見捨てられない程度に賭け事もアホも頑張って欲しいです(笑)。
最後の2篇はフレディー・ウィジョンのシリーズ。
彼はドローンズ・クラブに所属していてビンゴの友人でもあるようです。
語り手のクランペット氏によれば、女の子と「意気投合するまではほぼ確実にOKなんだが、意気投合し続けでいるってことが絶対にできない」、「ボーイ・ミーツ・ガールにはついちゃあ途方もなく凄腕だが、あいにくボーイ・ルーズ・ガールについてもおんなじように百発百中」(P312)なんだそうです。瞬発力はあるけど持久力がないってことか?(笑)
「元気ハツラツ、ブラムレイ・オン・シー」 ではメイヴィス・ピースマーチ嬢とのロマンスが、「タズレイの災難 」 では、エイプリル・キャロウェイ嬢とのロマンスが披露されますけれど、結果はまぁお察し下さい……(遠い目)。
いやでも、皆フレディーには永遠の恋の探求者でいて欲しいと思うヨ!
個人的な笑いのツボはP345でのエイプリルとのやり取りでした。
ワタクシも「シャロット姫」が好きなのでちょっと親近感を持ちましたー。好きの方向性が全く違うんだけどさ(笑)。
どうでもいいけど、ウッドハウス作品って「フレディー」多過ぎでかなり混乱します。
エムズワース卿の次男もフレディーだったしなぁ。
ウッドハウスの笑いのエッセンスが詰まったなかなか豪華なセレクト作品集なので、ウッドハウスの本って何冊も出ているからどれから読めばいいかな~と悩んでらっしゃる方にもお薦めできると思います。
お気に召したらジーヴスのシリーズやエムズワース卿のシリーズなどもどうぞ☆
<ウッドハウス作品感想>
■国書刊行会版
ジーヴスもの。
『比類なきジーヴス』
『よしきた、ジーヴス』
『それゆけ、ジーヴス』
『ウースター家の掟』
『でかした、ジーヴス』
『サンキュー、ジーヴス』
『ジーヴスと朝のよろこび』
『ジーヴスと恋の季節』
エムズワース卿もの。
『ブランディングズ城の夏の稲妻』
■文藝春秋社版
『ジーヴズの事件簿』
『エムズワース卿の受難録』
『マリナー氏の冒険譚』






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