論理は右手に (フレッド・ヴァルガス)
『論理は右手に』
フレッド・ヴァルガス 著 藤田真理子 訳 創元推理文庫 刊
パリの街路樹の根元に落ちていた犬の糞から人骨が発見された。
元内務省調査員のルイ・ケレヴェレールは友人の甥で中世史学者のマルクを助手にし、独自の捜査を進めていく。ブルターニュの村ポール=ニコラ在住の講師の飼い犬に辿り着いたケルヴェレールは、つい最近その村の海辺で老女が事故死していたことを知る。
犬は何故人骨を口にしたのか、そして骨は事故死した老女のものなのか。
若き歴史学者たちを従えたケルヴェレールは老女の死の真相を探ろうとするが……。
三聖人シリーズの2冊目。
今回のメイン主役はヴァンドスレールの友人であるルイ(リュドヴィク)・ケルヴェレールです。
マルクとマティアスは彼の助手として活躍しますが、リュシアンはマルクの荷造りを手伝う(彼は前作でも荷造りをやってあげていましたね。聖ルカは荷造りが得意なのかな?)くらいで殆ど出番がありません。ヴァンドスレールもあんまり出てきません。因みにボロ館の場面も少ないです。
シリーズ物としての楽しみを味わえなくてちょっとがっかりしておりましたが、それを補って余りあるのがケルヴェレールの魅力でしょうか。
ビュフォという名前のヒキガエルを相棒としているかなりの変わり者ではありますけれど、過去に色々なしがらみや謎を抱えている一筋縄ではいかない人物で、五十歳という年齢の割に男性としての魅力もなかなかのもののようです。マルクの伯父のアルマン・ヴァンドスレールもかなり魅力的でしたが、ケルヴェレールは癒えない古傷を抱え込んでいる(と云うかかさぶたになりかかった傷を何度も何度も剥がしてしまっているようにも思えます)だけに見ていて危なっかしいところがあって、達観している部分との齟齬と合わせると相乗効果の魅力が出てくるように思えます。
何と申しますか、有能なヘタレには挫折と自嘲と離別(特に昔の恋人が忘れられなかったりするとベスト)が不可欠だよね!と主張したくなってしまう感じでしょうか(笑)。
これは著者の年配男性の描き方が巧みなせいかもしれませんね。若者(と云っても三十代も半ば)の三聖人たちが時として霞んでしまうほど彼らの陰影は鮮やかで印象に残ります。
マルクはもうそろそろ落ち着いてもいいんじゃないの?と思いつつ、余裕が無くてピリピリイライラしながらも付き合いは良いんですよね。結局とことんお人好しなんだよなぁ、聖マルコは。
そんなユニークさ溢れる登場人物たちの内面の葛藤をユーモアとシリアスさを交えて語りつつ、犬の糞から見つかった人骨と老女の死の真相がケルヴェレールの追っていたものと絡み合い、謎がほどけていく過程はお見事と云うほかありません。小道具になっている御託宣を出す機械の使い方も巧いなぁ!
べたつかずにさらっと終わらせるラストの読後感も心地良いものがありました。
一作目の訳者あとがきによれば、次回作はパリが舞台になるそうなので、懐かしのボロ館に再会できるのがとても嬉しいです。
ケルヴェレールも再登場して、今回彼の文書整理のバイトをしていたマルクは家政夫の仕事をするそうです。
今回のようになんだかんだと文句を云いつつも聖マルコはケルヴェレールの世話を焼くのでしょうか。
ひょっとしたらリュシアンとケルヴェレールとの会話なども出てくるのかな?
そのあたりのやりとりも楽しみなので次回作を早く読みたいです!
- フレッド・ヴァルガス、藤田 真利子
- 東京創元社
- 861円
書評/ミステリ・サスペンス




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