囚われちゃったお姫さま (パトリシア・C・リーデ)
『囚われちゃったお姫さま─魔法の森 1』
パトリシア・C・リーデ 著 田中亜希子 訳 創元ブックランド 刊
リンダーウォール王国の末の姫シモリーンは、上の6人の姉姫たちとはまったく違ってお姫さまらしくするのが退屈でたまりません。自分から進んで学んだことと云えば、剣術、魔法、ラテン語、料理、経済学と、お姫さまには相応しくないと云われることばかり。
名付け親の妖精に苦情を申し立ててはみたものの、その結果はハンサムなだけの隣国の王子セランディルとの結婚話。
「ドラゴンに食べられるほうがまし」とまで思いつめていたシモリーンは、城の庭で出会ったカエルからのアドバイスに従って城を抜け出し、困難から抜け出す手助けをしてくれる者の元へ向かうのですが……。
自分の頭で考えて行動できる、ちゃきちゃきと元気なお姫様が大活躍する何とも愉快なお伽話ファンタジーでした。
普通のお姫様と違って勉強家で独立独歩、気に入らない縁談を断る為にはドラゴンの巣穴に飛び込むことも厭わない勇敢さも備えたシモリーンが、魔法使いの陰謀やドラゴンの「キング」の後継者争いに巻き込まれるのですが、ユニークな仲間たちと共に危機を乗り切っていきます。
主人公のシモリーンは当然としても、この作品中では女の子や女性の方が意志的ですね。
シモリーンを囚われの姫にする理知的なドラゴンのカズールや魔女のモーウェン、気弱そうに見えても実はなかなかのしっかり者な姫君のアリアノーラとの女同士のやりとりは非常に楽しかったです。
それから、この作品で描かれるカズールの巣穴はなかなか魅力的だったので、一ヶ月くらい滞在したくなってしまいました(笑)。ドラゴンの巣穴なんて人間の住むところじゃないと思っていましたが、シモリーンの家事能力の高さのせいもあって、かなり居心地が良さそうなんですよね。図書室や宝物部屋の探検もしてみたい!
全篇に散りばめられた童話や伝説などのエピソードの使い方も楽しいですね~。
求婚のお作法として、王子は姫君を巨人とか人食い鬼(オグル)とか恐ろしい妖精の呪いなどから解放しないといけなかったり、ドラゴンにさらわれるのがお姫様のステイタスだったり。
石の王子が通っていた英雄養成学校の同級生のジョージとアーサーとジャックのエピソードが語られるあたりでは思わず吹き出しそうになりました。確かに彼らが同級生で自分がまだ何も成し遂げてなかったらかなりのプレッシャーを感じるよねぇ……。
それから忘れてならないのが橋賢亀さんのイラストの魅力。
この作品の雰囲気にぴったりでした。カラーも素敵なんですが、中のモノクロの挿絵が素晴らしいです。
賑やかでテンポ良い話運びと読み易い翻訳のお蔭で楽しく読み進めました。
女の子が頑張るお話が好きな人にはお薦め。
4部作の1冊目ということなので、続刊での新しい境遇でシモリーンがどんな風な活躍を見せてくれるのか今から楽しみです。
- 田中 亜希子
- 東京創元社
- 2100円
書評/SF&ファンタジー



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