スカイシティの秘密 (ジェイ・エイモリー)
『スカイシティの秘密―翼のない少年アズの冒険』
ジェイ・エイモリー 著 金原瑞人・圷 香織 訳 創元推理文庫 刊
地上での大災害の後、生存者は巨大な柱の上に都市(スカイシティ)を建設し、住人たちは天使のような翼を持った姿で空を飛べるように進化した。
しかし、彼ら天空人(エアボーン)たちの生活は未だ地上からの物資に頼るものだった。その供給システムが妨害されていることを知った行政都市シルバーサンクタムの指導者セリーナは、生まれつき翼の無い少年アズリエルを地上への調査へ向かわせる。
未知の世界である地上に降り立ったアズは、果たして使命を果たすことができるのか──。
のっけから厳しいことを云わせて戴くのならば、SFとしてもファンタジーとしても中途半端な印象を受けました。
天空人(エアボーン)のヴィジュアル的な造形は素敵だなと思うんですが、地上人(グラウンドリング)からの進化でどのようにして決定的な差異が起こったのかなどは語られていないんですよね。
アズの体重が地上人と比べて軽いと云う言及があることから、人でありながら骨格などは鳥に近いんだろうと思いますが、そのあたりに関しての説明がなかったのが残念。
本筋に影響がないので割愛されているのかもしれませんけれど、エアボーンという種族を魅力的に見せる為には進化の過程についての説明がいくらかあったほうが彼らの歴史に厚みが出たのはないかなぁ。
SFではなくてファンタジーとしてならどうかと云うと、深みが足りないような気がしました。
主人公のアズはエアボーンの中でただひとり翼を持たずに生まれてきた少年です。
しかし、外見で他者との決定的な違いがあるにも関わらず、どうしようもない欠落感のようなものを味わっていない気がします。
難しいところのある少年だとされている割に根本的なところでは楽天的と云いますか、魂を食むような深い孤独を味わっていてもおかしくないのに、けっこう明るいんですよね。
別に鬱々とした内面描写を長々と読みたい訳ではないのですが、翼に関してはどうも設定が先行しているような印象を抱いてしまって、翼を持つ必然性が感じられませんでした。神話的なイメージのひとつでも織り込まれていればまた違ったのでしょうが……(エアボーンたちにはそれぞれの名前が物語っているように天使のイメージが散りばめられていはいますけれど、これまた設定の為のネーミングっぽくて)。
助祭たちやヒューマニストたちの悪役ぶりも割合平面的と云うかわかりやすいので、こちらにももう少しインパクトが欲しかったところです。
アズが地上に落とされて地上人グラウンドリングの少女キャシーと出会うあたりからは冒険活劇風で面白くなってきます。
ここで魅力的なのは何とと云ってもキャタピラで走る乗り物、マークコーマーのバーサ号でしょう。「彼女」の八面六臂な活躍には本当にわくわくさせてもらいました。このあたりは短めの章立てで映像的にテンポ良く進んでいく物語の流れに身を委ねているのが楽しかったです。
この物語のもうひとりの主人公と云えるキャシーの漢気(?)も恰好良かったと思います。アズよりもよっぽどオトコマエなので、いっそ彼女が主人公だったほうが燃えたかもしれません(笑)。
少年少女の冒険ものとしてはまあ面白かったと思いますが、舞台となる世界については物足りない部分が多かったので、次巻以降で色々と明かされていけば良いなぁ。
- 金原 瑞人、圷 香織
- 東京創元社
- 1155円
書評/SF&ファンタジー




Comments