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2008.08.22

剣の名誉 (エレン・カシュナー)

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『剣の名誉』
エレン・カシュナー 著 井辻朱美 訳 ハヤカワFT文庫 刊


「私が挑戦するのは、人にそんな仕打ちをするべきじゃないからです。誰もそのことに気づいていないし、気にもかけていないようですけど。特に卿はそうです。もう彼女は自分のものだと思ってて、両親もそう思ってて──伯父様でさえそう思ってる。胸が悪くなるわ」
 伯父は見たこともないような表情で私を見上げていた。そんなことがあるとすればだけれど、いまにも泣きそうだった。

(同書 P414より引用)


破産寸前の田舎貴族の娘キャザリンは、その元凶とも云うべき伯父トレモンテーヌ公爵から市の邸への招待を受ける。自分の未来を都会で拓けることを喜ぶキャザリンだったが、<狂公爵>の異名を持つ伯父が彼女に命じたのはなんと男装と剣客修行だった。伯父の考えに不満を抱きながらも、キャザリンは公爵の過去を良く知る師の下で剣術の才能を開花させ、友情と義侠心から名誉をかけた決闘を申し入れるまでの腕前となる。
その一方で過去の因縁を発端とする陰謀が水面下で動き出し、トレモンテーヌ公爵を窮地に追い込もうとしていた……。

『剣の輪舞』の続篇。十八年後の物語となります。
前作の『王と最後の魔術師』(→感想)を読んだ限りでは昔からかなりの女傑タイプだったのかな?と思っていたキャザリンですが、少女時代は都会での暮らしや綺麗なドレスに憧れる割と普通の女の子だったんですね。
そんな女の子がやりたい放題な破天荒人生を送る伯父様の薫陶(?)を受けて思いもかけなかった才能を花開かせていく成長物語です(たぶん)。普通の少女がその武勇伝を含めて伝説の存在になるまでのお話でもあり、ある意味で「マイ・フェア・レディ」な感じでもあるかも。

売られた後継者(言葉が悪いんですが)のように見える立場のキャザリンが色々な経験を積んで逞しくなっていく姿がなんとも頼もしいです。母娘の間に築かれている信頼関係が由来しているのでしょうけれど、この子は芯の部分がとてもまっとうなんですよね。きちんとした愛情を受けて育った子の強さが発揮されているなぁと思います。最終的には伯父様の心も動かすまでになるしね!
従僕の少年マーカスとの共犯関係も微笑ましかったりドキドキしたりと楽しませてもらいましたし、<黒薔薇>とのやりとりも色っぽかったですね~。
『王と最後の魔術師』を読んだ時に、なんだかんだ云ってキャザリンはジェシカに対してちょっと甘いところがあるんじゃないかなーという印象があったのですが、今回の話を読んで黒薔薇とのことがあったからなのか?と邪推してみたりしましたよ(笑)。

様々な出来事を経て大人の階段を駆け上がっていくキャザリンのパートも大変に面白かったのですが、本作の蔭の主役はトレモンテーヌ公爵だったのかもと思います。
トレモンテーヌ公爵夫人の後を継いで公爵になったアレクは、<狂公爵>の仇名の通りに、男女を問わずに愛人はとっかえひっかえしたり(でも好みとしては学の有る無しに関わらず頭の切れる人物が好きだよね)、貴族社会でも毒舌を吐いたり突拍子もない行動を取ったりして敵をたくさん作ったりといっそ清々しいほどの享楽的な人生を謳歌しています。
『剣の輪舞』でなにかってえと不機嫌そうにしていたあの美青年がこんな風な成長(?)を遂げていたのかとしみじみしていましたらば、本質的な部分はあんまり変わっていなくて猛烈に可愛かったりしてもうたまりません(笑)。
その愛されっぷりも含めてつくづく美味しいキャラクターですよねぇ。
リチャードの台詞じゃないですが、本当に「アレク、あなたって人は」って云いたくなるよな。
最後の最後までかなり幸せな人生だったのではないかと推察しますけども、もうアレクならなんでも許す!って気持ちになってしまいますハイ。
あ、リチャードの出番は少ないですが、美味しい所は鮮やかなまでに総取りなのでリチャードファンの方も御安心下さいませ!


そんなダブル主人公を中心に据えた非常にゴージャスな展開の一筋縄ではいかない恋と友情の陰謀の冒険活劇です。
読んでいてずいぶんお腹いっぱいになりましたが、女公爵キャザリンの細腕奮闘記(?)もちょっと読んでみたいな~と思ってしまいました。
まぁ、色々想像の余地を残してくれているのが著者の優しさなのかな。
トレモンテーヌ年代記とも云える三部作はここで終了。でもまた最初から三部作を読み返したくなってしまいました。今度は時系列順に読んでみようかな~などと楽しみが広がります。

なお、本作を読む前に『剣の輪舞<増補版>』に収録されている「死神という名前ではなかった剣客」は再読しておくとよりいっそう面白さが増すと思います。ここで言及されているアレクの妹がキャザリンの母親です。
アレクの屈折したシスコンっ振りを堪能する意味でも是非!(笑)

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2008.08.16

乱鴉の饗宴 氷と炎の歌4 (ジョージ・R・R・マーティン)

乱鴉の饗宴 上 氷と炎の歌 4 乱鴉の饗宴 下 氷と炎の歌 4

『乱鴉の饗宴』上
ジョージ・R・R・マーティン 著 酒井昭伸 訳 早川書房 刊


権力に群がる人々が陰謀を掲げて互いを陥れたり陥れられたりしております第4巻です。
今回はタイウィン公の死とサーセイの専横によるラニスター家の崩壊の過程に割と多くのページが割かれているかな。
タイウィン公の死によって徹底的に傾いたラニスター家を何とか立て直そうとするサーセイの奮闘自体は別に悪いことではないのですが、唯一の頼みの綱であるジェイム(ジェイミー)を遠ざけるあたりでもう破滅への道をまっしぐらって感じですよサーセイ……。権謀術数が得意ではないのに(でも自分ではそっち方面が得意だと思ってるみたいですけども)色々と陰謀を巡らせている彼女に対して、「いやもう貴女絶対策士向きじゃないから! その方面が得意な人に任せてどーんと構えていた方がいいよ!」とツッコミ(←?)を入れずにはおられません。でも、今のラニスター家にはそれだけの人材がいないってのもあるし、自分で傾いた家をどうにかしようと考えること自体はたいへん評価できることなんですけどねぇ……。自らの能力を見極めるのも上に立つ者として必要な要素なのだなぁとしみじみ致しました。
ブリエンヌ(ブライエニー)との旅で肉体的にも精神的にも大きな変化を経たジェイム(ジェイミー)は、サーセイとの関係に齟齬をきたし、王都を離れることになります。
出奔して行方知れずのティリオンといい、ものの見事にラニスター家はバラバラになってます。
こうなってみると、家長であったタイウィン公の存在がいかに大きかったのか(彼の行ったことの是非はともかくとして)を読者としても痛感せざるを得ない訳で、またしても安定を欠くことになったウェスタロスの将来が激しく危ぶまれます。
マージェリーを中心としたティレル(タイレル)家も盛大な危機を迎えているようなので、キングズランディングはまだまだ荒れ模様が続くようですね。
そのほか、鉄諸島の後継者争いやドーンでの不穏な動きなども描かれていますが、スタンニス(スタニス)王と壁の関係や、デーナリス(デナーリス)に関しては名前がちらほら出てはいても殆ど具体的な言及がなく、彼らのことは次巻へ持ち越しです。ああ気になるなぁ!
あと、今回読んでて一番つらかったのはブリエンヌ(ブライエニー)のパートでした。
サンサ探索の旅の途中(と云うか強制終了)で彼女はとんでもない目に合うのですが、その展開が精神的にも肉体的にも本当にきついです。
健気に頑張るポドリック少年や口の減らないサー・ハイル(彼はブリエンヌのことを憎からず思っているのかな? そのへんの微妙な雰囲気も良いですねー。でもブリエンヌは過去のこともあって彼のこと眼中にないみたいだけど・笑)との道中は、ジェイムとの旅ほどではなかったもののなかなか楽しかったのに、その終わりはこうぶった切られるのかと。
サーセイに関してはかなり自業自得の部分があるので、彼女がいくら酷い目にあってもあんまり同情の気持ちは湧いてこないのですが(すいません)、ブリエンヌはあの状況ではもう他にどうしようもなかったじゃんよ……。
などと、ギリギリのところで行った選択が後々の苦難の前奏曲みたいになったりしています。
これから先の展開は本当にどうなっちゃうんでしょうねぇ。大きな苦悩を背負うことになってしまった(であろう)ブリエンヌのこれからには悲劇しか待ち構えていないような気がしています。ああ。
アリアのパートも非常に気になるところで終わってますし、ベーリッシュ(ベイリッシュ)公が着々と進める計画に巻き込まれそうなサンサのことも不安ですし、毎度のことながら「続きどうなるの続き!!」ってな心境です。
しかし、5巻はデーナリスやティリオンなど今回出てこなかった人々にスポットが当たるそうなので、4巻の純粋な続きは6巻以降にならないと読めないんですよね~。
毎回毎回同じことを繰り返すばかりで芸がありませんけど、早く続きが読みたいです!


今回最大の話題の焦点になってしまっているのは、内容よりも訳者変更による人名及び用語の変更かと思います。この記事の文中でやたら()を入れている人名も変更があったものですが、翻訳自体の良し悪しはともかく、やはり1巻から3巻までの馴染みのあった用語に親しんでいるのでどうも違和感がぬぐえません。物語にすんなり入り込めなくて読了するまでにえらく時間がかかりました。
その一因は地名の細かい変更にもあります。
3巻と4巻の巻頭地図を見比べてちょろっと調べただけでもこれだけの変更がなされています。城や島の有る無しなどは無視して戴いて結構なんですけれど、字面がだいぶ変わっているので字面のみで地理の曖昧な把握をしていた自分には意外とダメージが大きかったです(溜息)。
あと、訳語の変更で個人的に残念だったのは、「ヴァラール・モルグリス」が「ヴァラー・モルグリス」になっていたことと(「ヴァラール」のくぐもったような響きが好きだったので)、夜警団(ナイツウォッチ)が<冥夜の守人(ナイツ・ウォッチ)>になっていたこと。
特に「夜警団」はシンプルで重厚な字面が無骨さと黒衣のブラザーたちの結束の固さを表現している訳語だと考えていたので、この先で使われないのはひたすら残念です。
凄く好きだったんだけどなぁ、この訳語。


続きはこちら↓

A Dance With Dragons (Song of Ice and Fire)
A Dance With Dragons (Song of Ice and Fire)


チェックするたびに発売日が変わっているんですけど、一体いつ出るのだ(笑)。
来年中には出ると考えてよいのか。



既刊の感想はこちら。


『七王国の玉座』 感想
『王狼たちの戦旗』 感想
『剣嵐の大地』→1巻感想 →2巻感想 →3巻感想


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2008.08.15

RDG レッドデータガール (荻原規子)

RDG レッドデータガール  はじめてのお使い (カドカワ銀のさじシリーズ)

『RDG レッドデータガール はじめてのお使い』
荻原規子 著 角川書店 刊


紀伊半島の霊山であり世界遺産にも認定された玉倉山。そこにある玉倉神社で育った鈴原泉水子(いずみこ)は、多忙な両親と離れ、神社の宮司である祖父と暮らしていた。
中学三年の春、具体的な進路を考え始めた泉水子は山奥の神社を中心とした自分の暮らしを変えようと考えるが、父の大成は彼女を東京の高校へ進学させるつもりであることを祖父から知らされる。
さらに、父の友人で泉水子の後見人でもある相楽雪政(さがらゆきまさ)は自分の息子深行(みゆき)を彼女に一生付き添わせるつもりでいるらしい。
父親の云うなりになるつもりなどない深行は泉水子に対して辛辣な態度を崩さず、泉水子もまた彼に対して良い感情を持てずにいた。
しかし、自分たちの将来をめぐる状況を変えたいと思ったふたりは不本意ながら協力し合うことになり……。


荻原規子さんの新作は現代ものの和風ファンタジーです。
普通であろうと思っているのに周囲からは変わり者でみそっかすだと思われている女の子が、実は大きな秘密と力を抱える存在で……という思春期系成長物の物語には割とよくあるパターンかも。
そこに修験道と山伏や姫神が関わってくるのですが、物語としてはまだまだ序盤なので謎が多いままです。
泉水子の両親からして謎が多過ぎますし、相楽父の思惑も謎に包まれています。
これからの展開で謎がほどけていくにつれ、面白さが増していくのではないかと期待しておりますが。

互いに対する印象を徐々に変化させていく泉水子と深行の関係も今後の読みどころのひとつになるのかな?
このふたりのやりとりを読んでいてなんとなく「赤毛のアン」を連想してしまいました。
いけすかなくて口が悪い男子とおさげ娘の組み合わせがそう考えさせるのか(笑)。

今回は主要登場人物のお披露目といった印象なので、続きが早く読みたいです。
次からは舞台が東京になるのかな。
泉水子の新しい生活は一体どのようなものになるのでしょうか。

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2008.08.13

ももいろの童話集 (アンドルー・ラング 編)

ももいろの童話集 (アンドルー・ラング世界童話集 第 5巻)

『ももいろの童話集 アンドルー・ラング世界童話集 第5巻』
アンドルー・ラング 編 西村醇子 監修 創元ブックランド 刊

英国の民俗学者であり編集者でもあったアンドルー・ラングが世界各国の民話を集めて全12巻の童話集としたものの新訳・新編集版の5巻目。


収録作品は以下の通り。


「小さな妖精と食料品屋」
「森の家」
「ひつぎのなかの姫」
「仲のいい三人兄弟」
「人魚のむすこハンス」
「グリップという鳥」
「スノーフレイク」
「ずるがしこい靴屋」
「カテリーナと運命の女神」
「隠者の手引きで姫をめとった男の話」
「命の水」
「きずついたライオン」
「兄と弟」
「魔法使いと弟子」
「金のライオン」
「ローズマリーの小枝」
「白いハト」
「トロルのむすめ」
「エスベンと魔女」
「ミノン・ミネット姫」
「ゆかいなおかみさんたち」
「リンドオルム王」
「ちびの野ウサギ」
「チックの話」
「幸運のドン・ジョバンニ 」


この巻にはシチリアやカタルーニャなどの民話が収められていて、今までのものとはちょっと違った雰囲気になるのかなと思っていましたが、他の国の民話や童話との違いはそれほど感じられませんでした。
ラングが編纂した時点で物語としての色調が統一化されているのでしょうか。元の話にあったであろう勢いや破天荒さはやっぱり失われてしまったんだろうとも思います。

今回印象に残ったのは、
「小さな妖精と食料品屋」、「ひつぎの中の姫」、「リンドオルム王」あたり。
「小さな妖精~」はアンデルセンの童話。
食料品店に住むゴブリンがその屋根裏部屋に住む学生の言葉に気を悪くして、彼にひとこと云ってやろうと意気込んで学生の部屋に向かうのですが、扉の鍵穴から覗いた光景の美しさに見とれてしまいます。
手に届かないものへの憧れの気持ちが切なく美しく描かれていて胸を打たれますが、ユーモラスなオチもひねりが利いています。
美しいものだけにどっぷり浸って生きていく訳にはいかないのはゴブリンも人間も同じなんだな(笑)。

「ひつぎのなかの姫」はデンマークの昔話。
結婚して七年の間子宝に恵まれなかった王様とお妃様。
子どもが授からないのはお妃様のせいだと思い込んだ王様は、戻ってきた時に子どもがいなければ別れるほかはないと云い残し、お妃様を置いて一年間の旅に出ます。
王様が留守の間に子どもができちゃっている方がよりいっそう問題が大きいのではないかと物凄~く思いますが、まあそれはそれとして(笑)。
思い悩んだお妃様はかしこい老婆に相談し、彼女の助言に従って半年後に姫を授かります。
ところが、その姫君は老婆の決めた乳母と城の中の人目に触れない場所で十四歳まで暮らさなくてはなりませんでした。たとえ両親であっても姫に近づくことは許されず、もし一目でも姫の姿を見れば大きな悲しみと不幸に見舞われることになると云うのです。
ところが、姫が十四歳の誕生日を迎える前日、どうしても娘に会いたいと云い張る王様は禁を破って姫に会ってしまいます。
その結果、王様は三つの選択を迫られます。
国中が黒死病におそわれることになるか、長い血みどろの戦争をすることになるか、死んだ姫を白木の棺に入れて教会に置き、一年間毎晩番兵をそばにつけて棺を守らせるか。
三つ目を選んだ王様は姫に云われた通りに番兵をつけるのですが、その番兵たちは決まって朝には姿を消してしまいます。
やがて姫の亡霊が番兵を食べてしまうとの噂が立ち、棺の番をするものは誰もいなくなってしまいます。
そこへ田舎から仕事を探しに出てきた鍛冶屋の青年クリスティアンがその役目を担うことになり……。
という話。
前置きが長くなりましたが、この話のクライマックスでの死者の結婚式と云うのがなんとも印象的で。
一晩、二晩目となんとかお役目を果たしたクリスティアンが三晩目に姫の棺の中で過ごすのですが、その間司祭によってある意味本人不在のままクリスティアンと姫の結婚式が行われます。これは死者の結婚式と呼ばれるもので、この式によって姫は呪いから解き放たれることになりますけれど、これによって結ばれた者は互いが生きている間は他の誰とも結婚できないのだそうなのです。
勿論、姫とクリスティアンは結婚してハッピーエンドになります。
司祭と教会が出てくるのでキリスト教に取り込まれてはいるのでしょうが、なにやら異教的なものを感じてしまうのは考え過ぎでしょうか。棺桶の中で自分の結婚式の式次第を聞かされるのって、なにやら不気味な雰囲気が漂っているような気がします。この背景にあるものを知りたいなぁ。

「リンドオルム王」はスウェーデンの昔話。
例によって子宝に恵まれない王様お妃様がおりまして、貧しいの老婆の助言に従ったところ、ふたりの王子を授かります。しかし、お妃様が老婆の云い付けを正しく守らなかった為に、一人目の王子は蛇のような怪物リンドオルムとして生まれてしまいます。この子はお妃様にその存在を知られる前に侍女によって森に捨てられてしまいますが、二人目の王子はこの上なく美しく侍女はこの王子だけを王様お妃様に会わせます。
やがて時は過ぎ、二十歳となった弟王子は花嫁探しの旅に赴こうとします。ところが、十字路にリンドオルムが横たわって王子の馬車を止めて、「わたしが連れ合いを見つけてそのかたわらで眠るまで、おまえが花嫁を得ることはできぬ」と宣言します。同じやりとりが三度繰り返され、困った王様とお妃様はリンドオルムに花嫁をあてがうのですが、どんな女を連れて行っても翌朝には八つ裂きにされてしまうのです。
この噂が国中に広まった頃、ある女が邪魔に思っていた継娘を亡き者にしようと、彼女をリンドオルムの花嫁とする名乗りを上げるのですが……。
また前置きが長くなった(笑)。
リンドオルムの花嫁となった娘は、鍋一杯の灰汁と三つのたわしと七枚重ね着した下着で婚礼の晩に臨み、見事に王子の呪いを解くのですが、蛇にまつわる脱皮と再生と復活のイメージが興味深いです。
この話、細部に異同はありますが、娘と王子が結婚するまではシンデレラのモティーフ(美女と野獣のイメージもあるかな)、結婚してから後はペロー版眠れる森の美女のモティーフの面影があるような気がします。
先行する民話にどのような影響を受けてこのような話になったのかという辺りにも興味津々です。
ところで、見目麗しき弟王子は兄の結婚後は出番がないのですが、どうなっちゃったのかしら。
二十歳までは王家の跡継ぎとして育てられていたのに、兄の呪いが解けてお役御免になっちゃったことで色々含むところはなかったのだろうかとか無事に花嫁はみつけられたのかとかいらんことを考えてみたり(笑)。

シチリアやカタルーニャの物語が読める!と盛り上がっていた割には、自分が食いついたのは北欧系の話ばかりでしたが(笑)、様々な地域のお話が読める貴重なシリーズだと思いますので、各地の民話や童話などに興味のある向きは是非。





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