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2008.08.13

ももいろの童話集 (アンドルー・ラング 編)

ももいろの童話集 (アンドルー・ラング世界童話集 第 5巻)

『ももいろの童話集 アンドルー・ラング世界童話集 第5巻』
アンドルー・ラング 編 西村醇子 監修 創元ブックランド 刊

英国の民俗学者であり編集者でもあったアンドルー・ラングが世界各国の民話を集めて全12巻の童話集としたものの新訳・新編集版の5巻目。


収録作品は以下の通り。


「小さな妖精と食料品屋」
「森の家」
「ひつぎのなかの姫」
「仲のいい三人兄弟」
「人魚のむすこハンス」
「グリップという鳥」
「スノーフレイク」
「ずるがしこい靴屋」
「カテリーナと運命の女神」
「隠者の手引きで姫をめとった男の話」
「命の水」
「きずついたライオン」
「兄と弟」
「魔法使いと弟子」
「金のライオン」
「ローズマリーの小枝」
「白いハト」
「トロルのむすめ」
「エスベンと魔女」
「ミノン・ミネット姫」
「ゆかいなおかみさんたち」
「リンドオルム王」
「ちびの野ウサギ」
「チックの話」
「幸運のドン・ジョバンニ 」


この巻にはシチリアやカタルーニャなどの民話が収められていて、今までのものとはちょっと違った雰囲気になるのかなと思っていましたが、他の国の民話や童話との違いはそれほど感じられませんでした。
ラングが編纂した時点で物語としての色調が統一化されているのでしょうか。元の話にあったであろう勢いや破天荒さはやっぱり失われてしまったんだろうとも思います。

今回印象に残ったのは、
「小さな妖精と食料品屋」、「ひつぎの中の姫」、「リンドオルム王」あたり。
「小さな妖精~」はアンデルセンの童話。
食料品店に住むゴブリンがその屋根裏部屋に住む学生の言葉に気を悪くして、彼にひとこと云ってやろうと意気込んで学生の部屋に向かうのですが、扉の鍵穴から覗いた光景の美しさに見とれてしまいます。
手に届かないものへの憧れの気持ちが切なく美しく描かれていて胸を打たれますが、ユーモラスなオチもひねりが利いています。
美しいものだけにどっぷり浸って生きていく訳にはいかないのはゴブリンも人間も同じなんだな(笑)。

「ひつぎのなかの姫」はデンマークの昔話。
結婚して七年の間子宝に恵まれなかった王様とお妃様。
子どもが授からないのはお妃様のせいだと思い込んだ王様は、戻ってきた時に子どもがいなければ別れるほかはないと云い残し、お妃様を置いて一年間の旅に出ます。
王様が留守の間に子どもができちゃっている方がよりいっそう問題が大きいのではないかと物凄~く思いますが、まあそれはそれとして(笑)。
思い悩んだお妃様はかしこい老婆に相談し、彼女の助言に従って半年後に姫を授かります。
ところが、その姫君は老婆の決めた乳母と城の中の人目に触れない場所で十四歳まで暮らさなくてはなりませんでした。たとえ両親であっても姫に近づくことは許されず、もし一目でも姫の姿を見れば大きな悲しみと不幸に見舞われることになると云うのです。
ところが、姫が十四歳の誕生日を迎える前日、どうしても娘に会いたいと云い張る王様は禁を破って姫に会ってしまいます。
その結果、王様は三つの選択を迫られます。
国中が黒死病におそわれることになるか、長い血みどろの戦争をすることになるか、死んだ姫を白木の棺に入れて教会に置き、一年間毎晩番兵をそばにつけて棺を守らせるか。
三つ目を選んだ王様は姫に云われた通りに番兵をつけるのですが、その番兵たちは決まって朝には姿を消してしまいます。
やがて姫の亡霊が番兵を食べてしまうとの噂が立ち、棺の番をするものは誰もいなくなってしまいます。
そこへ田舎から仕事を探しに出てきた鍛冶屋の青年クリスティアンがその役目を担うことになり……。
という話。
前置きが長くなりましたが、この話のクライマックスでの死者の結婚式と云うのがなんとも印象的で。
一晩、二晩目となんとかお役目を果たしたクリスティアンが三晩目に姫の棺の中で過ごすのですが、その間司祭によってある意味本人不在のままクリスティアンと姫の結婚式が行われます。これは死者の結婚式と呼ばれるもので、この式によって姫は呪いから解き放たれることになりますけれど、これによって結ばれた者は互いが生きている間は他の誰とも結婚できないのだそうなのです。
勿論、姫とクリスティアンは結婚してハッピーエンドになります。
司祭と教会が出てくるのでキリスト教に取り込まれてはいるのでしょうが、なにやら異教的なものを感じてしまうのは考え過ぎでしょうか。棺桶の中で自分の結婚式の式次第を聞かされるのって、なにやら不気味な雰囲気が漂っているような気がします。この背景にあるものを知りたいなぁ。

「リンドオルム王」はスウェーデンの昔話。
例によって子宝に恵まれない王様お妃様がおりまして、貧しいの老婆の助言に従ったところ、ふたりの王子を授かります。しかし、お妃様が老婆の云い付けを正しく守らなかった為に、一人目の王子は蛇のような怪物リンドオルムとして生まれてしまいます。この子はお妃様にその存在を知られる前に侍女によって森に捨てられてしまいますが、二人目の王子はこの上なく美しく侍女はこの王子だけを王様お妃様に会わせます。
やがて時は過ぎ、二十歳となった弟王子は花嫁探しの旅に赴こうとします。ところが、十字路にリンドオルムが横たわって王子の馬車を止めて、「わたしが連れ合いを見つけてそのかたわらで眠るまで、おまえが花嫁を得ることはできぬ」と宣言します。同じやりとりが三度繰り返され、困った王様とお妃様はリンドオルムに花嫁をあてがうのですが、どんな女を連れて行っても翌朝には八つ裂きにされてしまうのです。
この噂が国中に広まった頃、ある女が邪魔に思っていた継娘を亡き者にしようと、彼女をリンドオルムの花嫁とする名乗りを上げるのですが……。
また前置きが長くなった(笑)。
リンドオルムの花嫁となった娘は、鍋一杯の灰汁と三つのたわしと七枚重ね着した下着で婚礼の晩に臨み、見事に王子の呪いを解くのですが、蛇にまつわる脱皮と再生と復活のイメージが興味深いです。
この話、細部に異同はありますが、娘と王子が結婚するまではシンデレラのモティーフ(美女と野獣のイメージもあるかな)、結婚してから後はペロー版眠れる森の美女のモティーフの面影があるような気がします。
先行する民話にどのような影響を受けてこのような話になったのかという辺りにも興味津々です。
ところで、見目麗しき弟王子は兄の結婚後は出番がないのですが、どうなっちゃったのかしら。
二十歳までは王家の跡継ぎとして育てられていたのに、兄の呪いが解けてお役御免になっちゃったことで色々含むところはなかったのだろうかとか無事に花嫁はみつけられたのかとかいらんことを考えてみたり(笑)。

シチリアやカタルーニャの物語が読める!と盛り上がっていた割には、自分が食いついたのは北欧系の話ばかりでしたが(笑)、様々な地域のお話が読める貴重なシリーズだと思いますので、各地の民話や童話などに興味のある向きは是非。





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書評/SF&ファンタジー


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Comments

こんにちは。YO-SHIと言います。読書ブログやっています。

「ももいろの童話集」私も読みました。
色々なお話を仕込むのに最適なシリーズですね。

それぞれの地方の独特の価値観からお話ができているかと思いましたが、意外と共通したものが多かったですね。
兄や姉より、弟や妹の方が思慮深いところなんか、万国共通なのでしょうか?

Posted by: YO-SHI | 2008.08.22 at 01:49 PM

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Tracked on 2008.08.22 at 01:50 PM

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