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2008.08.16

乱鴉の饗宴 氷と炎の歌4 (ジョージ・R・R・マーティン)

乱鴉の饗宴 上 氷と炎の歌 4 乱鴉の饗宴 下 氷と炎の歌 4

『乱鴉の饗宴』上
ジョージ・R・R・マーティン 著 酒井昭伸 訳 早川書房 刊


権力に群がる人々が陰謀を掲げて互いを陥れたり陥れられたりしております第4巻です。
今回はタイウィン公の死とサーセイの専横によるラニスター家の崩壊の過程に割と多くのページが割かれているかな。
タイウィン公の死によって徹底的に傾いたラニスター家を何とか立て直そうとするサーセイの奮闘自体は別に悪いことではないのですが、唯一の頼みの綱であるジェイム(ジェイミー)を遠ざけるあたりでもう破滅への道をまっしぐらって感じですよサーセイ……。権謀術数が得意ではないのに(でも自分ではそっち方面が得意だと思ってるみたいですけども)色々と陰謀を巡らせている彼女に対して、「いやもう貴女絶対策士向きじゃないから! その方面が得意な人に任せてどーんと構えていた方がいいよ!」とツッコミ(←?)を入れずにはおられません。でも、今のラニスター家にはそれだけの人材がいないってのもあるし、自分で傾いた家をどうにかしようと考えること自体はたいへん評価できることなんですけどねぇ……。自らの能力を見極めるのも上に立つ者として必要な要素なのだなぁとしみじみ致しました。
ブリエンヌ(ブライエニー)との旅で肉体的にも精神的にも大きな変化を経たジェイム(ジェイミー)は、サーセイとの関係に齟齬をきたし、王都を離れることになります。
出奔して行方知れずのティリオンといい、ものの見事にラニスター家はバラバラになってます。
こうなってみると、家長であったタイウィン公の存在がいかに大きかったのか(彼の行ったことの是非はともかくとして)を読者としても痛感せざるを得ない訳で、またしても安定を欠くことになったウェスタロスの将来が激しく危ぶまれます。
マージェリーを中心としたティレル(タイレル)家も盛大な危機を迎えているようなので、キングズランディングはまだまだ荒れ模様が続くようですね。
そのほか、鉄諸島の後継者争いやドーンでの不穏な動きなども描かれていますが、スタンニス(スタニス)王と壁の関係や、デーナリス(デナーリス)に関しては名前がちらほら出てはいても殆ど具体的な言及がなく、彼らのことは次巻へ持ち越しです。ああ気になるなぁ!
あと、今回読んでて一番つらかったのはブリエンヌ(ブライエニー)のパートでした。
サンサ探索の旅の途中(と云うか強制終了)で彼女はとんでもない目に合うのですが、その展開が精神的にも肉体的にも本当にきついです。
健気に頑張るポドリック少年や口の減らないサー・ハイル(彼はブリエンヌのことを憎からず思っているのかな? そのへんの微妙な雰囲気も良いですねー。でもブリエンヌは過去のこともあって彼のこと眼中にないみたいだけど・笑)との道中は、ジェイムとの旅ほどではなかったもののなかなか楽しかったのに、その終わりはこうぶった切られるのかと。
サーセイに関してはかなり自業自得の部分があるので、彼女がいくら酷い目にあってもあんまり同情の気持ちは湧いてこないのですが(すいません)、ブリエンヌはあの状況ではもう他にどうしようもなかったじゃんよ……。
などと、ギリギリのところで行った選択が後々の苦難の前奏曲みたいになったりしています。
これから先の展開は本当にどうなっちゃうんでしょうねぇ。大きな苦悩を背負うことになってしまった(であろう)ブリエンヌのこれからには悲劇しか待ち構えていないような気がしています。ああ。
アリアのパートも非常に気になるところで終わってますし、ベーリッシュ(ベイリッシュ)公が着々と進める計画に巻き込まれそうなサンサのことも不安ですし、毎度のことながら「続きどうなるの続き!!」ってな心境です。
しかし、5巻はデーナリスやティリオンなど今回出てこなかった人々にスポットが当たるそうなので、4巻の純粋な続きは6巻以降にならないと読めないんですよね~。
毎回毎回同じことを繰り返すばかりで芸がありませんけど、早く続きが読みたいです!


今回最大の話題の焦点になってしまっているのは、内容よりも訳者変更による人名及び用語の変更かと思います。この記事の文中でやたら()を入れている人名も変更があったものですが、翻訳自体の良し悪しはともかく、やはり1巻から3巻までの馴染みのあった用語に親しんでいるのでどうも違和感がぬぐえません。物語にすんなり入り込めなくて読了するまでにえらく時間がかかりました。
その一因は地名の細かい変更にもあります。
3巻と4巻の巻頭地図を見比べてちょろっと調べただけでもこれだけの変更がなされています。城や島の有る無しなどは無視して戴いて結構なんですけれど、字面がだいぶ変わっているので字面のみで地理の曖昧な把握をしていた自分には意外とダメージが大きかったです(溜息)。
あと、訳語の変更で個人的に残念だったのは、「ヴァラール・モルグリス」が「ヴァラー・モルグリス」になっていたことと(「ヴァラール」のくぐもったような響きが好きだったので)、夜警団(ナイツウォッチ)が<冥夜の守人(ナイツ・ウォッチ)>になっていたこと。
特に「夜警団」はシンプルで重厚な字面が無骨さと黒衣のブラザーたちの結束の固さを表現している訳語だと考えていたので、この先で使われないのはひたすら残念です。
凄く好きだったんだけどなぁ、この訳語。


続きはこちら↓

A Dance With Dragons (Song of Ice and Fire)
A Dance With Dragons (Song of Ice and Fire)


チェックするたびに発売日が変わっているんですけど、一体いつ出るのだ(笑)。
来年中には出ると考えてよいのか。



既刊の感想はこちら。


『七王国の玉座』 感想
『王狼たちの戦旗』 感想
『剣嵐の大地』→1巻感想 →2巻感想 →3巻感想


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