ユークリッジの商売道 (P・G・ウッドハウス)
『ユークリッジの商売道』
P・G・ウッドハウス 著 岩永正勝・小山太一 編訳 文藝春秋 刊
ウッドハウス選集の第四弾です。
収録作は以下の通り。
「ユークリッジの犬学校 」
「ユークリッジの傷害同盟 」
「バトリング・ビルソンのデビュー」
「ドーラ・メイソン救援作戦 」
「バトリング・ビルソン再登場 」
「男の約束 」
「婚礼の鐘は鳴らず 」
「ルーニー・クートの見えざる手」
「バトリング・ビルソンの退場 」
「ユークリッジ虎口を脱す」
「メイベル危機一髪」
「きんぽうげ記念日」
「ユークリッジと義理義理叔父さん」
「ユークリッジの成功物語 」
『ツイてる男』第二話「青天から霹靂」
事業を成功させるには、奇抜とも云えるような素晴らしい発想力とそれを実現しようとする行動力、大胆さと細心さ、人当たりの良さと他人を惹き付ける魅力が不可欠であるかと思います。
黄色の雨合羽(マッキントッシュ)を身にまとい、立派な鼻には鼻眼鏡を乗せて針金で大きな耳に結わえ付けているという服装からしてなんとも個性的な本書のタイトルロールである、スタンリー・ファーンショー・ユークリッジ(※ファーンショーはFeatherstonehaughと綴ります。難しい!)にはそのすべてが備わっています。
これでどうしていっぱしの青年実業家として大成功しないのか。
それは一攫千金な儲け話を鵜呑みにする分別の無さと、小金を手にした途端に豪遊し始めちゃう計画性の無さのせいで全部自分の首を絞めまくっているからなんでしょうねぇ。
抜群の企画力があるんだから、それを売り込んでみるのも良いでしょうに、見果てぬ夢の錬金術(笑)を追いかけてしまうフリーダムっぷりにはいっそ清々しささえ覚えてしまいますよ。
友人にお金をせびりまくったり、服を無断で借りまくったり、果ては恩多い伯母さんに迷惑をかけまくっていたり(しかも後足で砂をかけまくっているような迷惑行為ばっかりやってるしさ……)と、読んでいてあんまりお知り合いになりたいタイプではないと云うか、積極的に関わり合いになりたくない人物です。
しっかし、彼の学生時代からの善き友人である語り手のコーコラン(コーキー)君やジョージ・タッパー(タッピー。外務省のお役人なんですよ。ユークリッジみたいな奴と付き合いがあるのが不思議でたまらない真面目な好人物)は本当にお人好しですよねぇ。
普通、ここまで喰い物にされたら絶縁するんじゃないかと思いますが、たぶんそんな欠点(?)を補ってあまりある程、ユークリッジには愛嬌があるのでしょうな。
犬の学校を作ってみたり、雑誌の定期購読についている傷害保険でひと儲けしようとたくらんだり、向かうところ敵無しなボクサー(ただし、その条件が揃うのがとても大変)のマネージメントをしてみたり、次から次へとしょうもないことに手を出しては全部見事に失敗しまくっていますが、そんな彼の破天荒な言動は読んでいる我々小市民への反面教師的な応援歌にもなるのでは……ないかなぁ(笑)。
語り手のコーキーと一緒にユークリッジに突っ込むのはとても楽しかったです!
まったくしょうがない奴だなぁ、と諦めモードでつきあってみると宜しいかと。
同時収録の「青天から霹靂」はユークリッジとは逆に、儲けようなんてさっぱり思っていないのにうっかり資産家になってしまったローランド・ブリーク君の話です。
美味しい儲け話(実は詐欺)にうかうかとひっかかってしまったローランド君の運命や如何に!
蛇足ながら、「メイベル危機一髪」 、 「きんぽうげ記念日」 、 「ユークリッジと義理義理叔父さん」 の三作品は
国書刊行会版の『エッグ氏、ビーン氏、クランペット氏』に収録されている「メイベルの小さな幸運 」 、「バターカップ・デー」 、「ユークリッジとママママ伯父さん」 と同じ作品です。
訳の違いを楽しむの一興かも。
<ウッドハウス作品感想>
■国書刊行会版
ジーヴスもの。
『比類なきジーヴス』
『よしきた、ジーヴス』
『それゆけ、ジーヴス』
『ウースター家の掟』
『でかした、ジーヴス』
『サンキュー、ジーヴス』
『ジーヴスと朝のよろこび』
『ジーヴスと恋の季節』
エムズワース卿もの。
『ブランディングズ城の夏の稲妻』
短篇集。
『エッグ氏、ビーン氏、クランペット氏』
■文藝春秋社版
『ジーヴズの事件簿』
『エムズワース卿の受難録』
『マリナー氏の冒険譚』



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